「ゾロ、今日来れねぇの?」
「ああ。悪い。急に頼まれてバイトが入った」
「そ、っか。そっか。まあ仕方ないよな。別に今日じゃなくてもいいしな。頑張れよ、バイト」
「悪いな」
そう言って電話は切れた。
ツーツーと言う無機質な音が聞こえ出してから、サンジは溜息を吐き出した。
自分の下手な演技に嫌気がさす
今日はクリスマス。
「別に今日じゃなくてもいいしな」な訳が無い。クリスマスだから一緒に過ごしたいのだ。
ゾロとサンジは所謂恋人と言う仲だ。
付き合い出してそれなりに年月は過ぎている。でも実は2人は一緒のクリスマスを知らない。
最初の1年目、サンジの仕事で過ごせなかった。次の年も飲食店で働くサンジにはクリスマスなんてものは書入れ時で休めない。
が、何とか都合を付けて今年!やっと!2人で過ごせる様に約束して当日を迎えたと言うのに今度はゾロがバイト…。
つくづくクリスマスとは縁が無いんだ、とサンジは思った。
今まで自分の仕事の所為でゾロに迷惑を掛けた。
そんな自分がゾロに文句を言うのは失礼にも程がある。
「何…するかな」
煙草を啣えてソファに寝転ぶ。
1人で過ごすのなら今から張り切ってご馳走を作る気分になれなかった。
食べて欲しい相手が居るから料理を作る意味がある。自分だけが食べるならそんな意味なんてものは薄れた。
サンジが閉じていた眼を開ければ、眼前に見える窓の外が真っ暗になっていた。
僅かな間眼を瞑っていた心算だったがどうやらそれは長時間だったらしい。
ふわぁと背を延ばして欠伸ひとつすれば、
「起きたか」
そう声を掛けられてサンジは飛び上がる程、驚いた。
否、もしかしたら心臓が口から少し出たかも知れない。
バクンバクン!と跳ねる心臓。
「ゾ、ゾロ…?」
少し声を聞けば誰だか分かる。と言ってもたった1人限定で。
ゾロには部屋の合鍵も渡してある。
持ち上げた頭をキョロキョロ動かす。
遠くで「ああ」と聞こえたと同時に人影が見えた。
「バ、イトは?」
「早抜けさせて貰った」
「何時来たんだ?起こせよ、来たら」
今自分の顔が鏡に映ったのを見れたらきっと凄い表情を浮かべてるんだろう、とサンジは思った。
ぽかんとして照れて嬉しくて泣きそうで、でも何処か困った様な入り混じった表情。
「大丈夫なのか?ゾロが抜けて」
「何とかしてるだろ。それにてめェが今日を楽しみにしてたのも知ってたからどうしても来てやりたかったんだよ」
「…サンタの格好で」
「今日だけこの格好で仕事しろって店長命令だ」
「着替えて来いよ…」
「煩ェ」
違う、こんな事言いたいんじゃない
正直めっちゃくちゃ嬉しくて気が動転してる
楽しみにしてたのを知っててくれたのも、だからわざわざ早上がりしてくれたのも、着替える時間を惜しんでサンタコスのままきてくれたのも、嬉しくて
「……サンタさん、俺宛のプレゼント預かってねぇの?」
「‥‥何が希望だ?‥‥」
「キス。それも愛がたっぷり込められた熱いヤツ」
Merry Christmas!!
-----------
先が容易に読めますが、甘ったるいの書くのスキ!
書いてて楽しいんです。
きっとサンちゃんはこの後、身も心もたっぷりと蕩けさせて貰った事でしょう!
(2008.12.25)