〇6th harmony




「やっぱり有名な観光地だから人が多いね〜」

「そうだな」



お昼を食べ終わり、せっかくだから有名なところを観光しようとなり日光東照宮へ来た。

真夏の日差しが暑いがそれでも来る人は来るため人でごった返している。気を付けないとすぐに人にぶつかってしまいそうだ。



「はぐれないようにしないと・・・・ってあれ?」



そう渉に言ったつもりがそこに渉の姿がない。キョロキョロとあたりを見渡すが気づいたら人の波に飲まれていたようで姿が見えず焦る。

はぐれないようにって言った瞬間にはぐれちゃったよ。どうしよう。



「亜季!」

「!」



そう呼ばれたのと同時に腕を掴まれ、ばっと振り返れば焦った表情をしている渉がそこにいた。渉の顔を見て内心ほっとする。



「ビックリした。気づいたらいなくなってて・・・悪かったな。いきなりはぐれちまって」

「あ、ううん。私こそちゃんと見てなくてごめん」

「不安にさせてごめん。ほら」

「!」




そういい渉が流れるように私の手を握り歩き出した。あまりにもさらっと流れるようにするから一瞬何が起こったかわからなかったが、意識した途端にまたぶわっと顔が熱くなる。



「こうしてればはぐれないだろ」

「あ、うん」

「もうはぐれんなよ」

「渉こそ!」




子供みたいに笑って言う彼につられて私も笑う。少し先を歩く彼の背中が大きく、それと一緒に視界に入る繋がれた手に思わずニヤけが止まらない。



「(お願いだから、今顔真っ赤だからこっち見ないでね・・・)」



そうお互いに思っていたことは、このとき知る由もなかった。






―――――――――――――





「ああ、楽しかったー!」

「それはよかった」

「渉は?」

「ああ、俺も楽しかったよ」



そういった彼の言葉を聞いて自然と笑みがこぼれる。

日光東照宮を観光して、ちょっと周りをぐるっとドライブしたところで日が暮れ、近くに夜景スポットがあったのでそこに来ていた。

山の上は夏でも涼しく、汗をかいていたのもあり少し肌寒い。少し腕をさすったのに気づいたのか渉が後ろから来ていた上着をかけてくれた。



「やっぱ山の上は少し肌寒いだろ。着てろ」

「え、でも渉が・・・・」

「俺は暑いからちょうどいいくらいだ。気にするな」

「・・・ありがと」



そういい赤くなった顔を見られたくなくて目の前に広がる景色へと目を向ける。
ちょうどここから町が一望できるため、暗闇の中でキラキラと光っているのがきれいで思わず感嘆の声が出た。



「すごい、綺麗」

「すげえな、こんなに見れるとは思わなかったぜ」

「うん、そうだね。連れてきてくれてありがとう、渉」



そう笑って彼の方を向けば、どこか真剣な顔つきでこちらを見ていることに気づき目を瞠る。

まっすぐと見つめられ動けないでいた。妙な緊張感でドキドキと心臓がうるさい。



「わ、たる・・・・?」

「あのさ。俺・・・・お前に伝えたいことがあってよ」

「え・・・・」

「俺と・・・・」




次の瞬間、静寂を破るように機械音が響く。静まり返っていた中で突然なったため二人してビックリして肩が跳ね上がった。

慌ててみてみたら悠菜からの着信。こんな時間にどうしたんだろう。



「いいよ、出て」

「あ、ごめんね」




渉に一言断りを入れて電話に出る。この時、どこか胸がざわつくというか、嫌な予感がしていた。

まさかそれが的中するとは思わず―――




「もしもし悠菜?どうした・・・・・・・・え?」




思わず耳を疑った。電話越しの悠菜は取り乱しており泣き喚いていたが、はっきりと聞こえた。




「崇裕くんが・・・・事故にあった・・・・?」







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