「今度の土曜日?」
『ああ。そっちに行く予定ができてさ、もしよければそれまで飯でもどうかと思ってよ』
渉から突然電話がかかってきたと思ったらデートの誘いだった。それに思わず嬉しくって声がうわずりそうになるのを必死にこらえ、「ぜひ!」と答える。
「駅で拾ってもらうのが一番わかりやすいかな?」
『そうだな。じゃあ11時に駅で』
「了解!」
それだけいい電話を切ったが、ニヤけが止まらずこのあと講義だってことも忘れるくらい浮かれていた。
明白に付き合ってるわけではないが、こうやって一緒に過ごす時間を増え、気持ちだけどんどん膨らんでいく。 好きだと伝えたいと思っているが、なかなかそのタイミングがなくただ時間だけが過ぎて行っていた。
「(ちゃんと伝えたいな・・・・嫌われてない、とは思うけど・・・・)」
ちょっと自信がなくなり怖くなってくるが、そういうところは昔っから強いほうだ。 言ってダメだったらダメ、OKだったら超ラッキー。
「(土曜日・・・・楽しみ!)」
――――――――――
「あ、渉―――!」
「!」
改札を出たら見覚えのある白黒の車にもたれかかって渉がすでにそこにいた。声をかければ笑みを浮かべて軽く手を振ってくれる。
「ごめんね、お待たせ。まさか遅延するとは思ってなくて」
「いいよ、さっきついたところだから・・・・・」
「・・・ん?どうかした?」
急に語尾をすぼめてじっとこちらを見つめてくる渉に首を傾げる。じろじろ見つめられてだんだんと恥ずかしくなって顔に熱が集まった。
「あ、あの・・・なにか・・・?」
「!ああ、悪りぃ。いつもと恰好が違うかったから・・・・」
本格的な真夏を迎えたため、今日はいつもより露出が少し多めな服装をしていた。 特に意図はなかったが、ノースリーブにミニ丈のショーパンにサンダル。
「え!似合ってない?暑いから夏っぽい格好にしただけなんだけど・・・・」
「ああ、いや。そういうことじゃなくて。脚めちゃ綺麗だし、かわいいなと思ってよ」
「!」
さらっと微笑みながらそう言われ、一気にぶわっと顔が熱くなる。元から整った顔をしている渉に微笑まれながらさらっと言われときめかないほうがおかしい。
「あ、ありがとう・・・・」
「ほら、とりあえず乗れよ」
そういい助手席のドアを開けて乗るように促される。顔が赤いのをバレないように少し俯きながら86に乗り込んだ。
そのあとすぐに渉も運転席へ乗り込み、出発する。
「実は今日会う予定だった人が都合つかなくなってよ。一日空いたんだ。もし亜季がよければ、ご飯行ってからどこか出かけないか?」
「え!いいの?」
「それはこっちのセリフだけど」
「私は一日空いてるからいいよ!どこか行きたいところとかある?」
「突然だったから何も見てなくてよ。飯食べながらいろいろ教えてほしい」
「わかった、任せて」
-7-
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