〇3rd harmony


あれから数週間経った。

あのクソ元カレはあれからなんの連絡もなく、自然消滅するのもなんかモヤモヤして嫌だったので「別れる。二度と関わるな」と連絡をいれ、着拒した。

それから接触してこようともせず、平和な毎日を過ごすことができてちょっとほっとする。


ほんと思い出すだけでなんであんな奴を選んだのだろう・・・と自分が本当に情けなくて仕方がなかった。

はあ、と無意識にため息が出るがそんな私にも最近少し楽しみができた。




♪〜♪〜♪〜





「あ!きた」


着信音が聞こえ、すぐさま携帯を手にして電話に出る。「よぉ」と声が聞こえただけで無意識に口元が緩んだ。



「お久しぶりです。今日も走りに行ってるんですか?」

『久しぶりって、1週間も経ってないだろ』

「そうでしたっけ?」

『そうだよ。着歴見てたらわかるだろ。今日はちょっとセッティングを変えてみたから、試しにこれから走りに行くところなんだ』



そういった渉さんは楽しそうにどういうセッティングにしたか、こういう違いがあってなど語り出した。
残念ながら車の知識がまったくない私はなんのことやらチンプンカンプンだったが、「そうなんだね」とか相槌を打っていればまた楽しそうに語り出す。



『おっと、悪い。分からねぇ話ばかりして』

「いえいえ、いずれ分かるようになりたいなぁと思ってるから大丈夫です。また今度実際に見せてくださいね」

『ああ、お安い御用だ。じゃあひとっ走りしてくる。じゃあな』

「うん、じゃあまた。気を付けて」



そういい電話を切った。時間にして5分もないこの通話が最近日課になりつつあった。といっても毎日ではないので日課といえるかわからないが、この時間が最近の楽しみになっている。



「(事故に合いませんように・・・・)」



それだけ祈って私は部屋の電気を消して眠りについた。








―――――――――――







「ねえ、亜季。最近何かいいことあった?」

「え?なんで?」


大学の食堂でご飯を食べていたところ、突然目の前で一緒にご飯を食べてる親友の悠菜に言われた。目をぱちくりする私と裏腹にどこかニヤニヤしたような笑みを浮かべている。



「いやあ、なんか携帯を見るたびに嬉しそうにニヤけてるし最近楽しそうだな〜と思って」

「・・・・まぁ、そうだね」

「なになに!ねえ教えてよー!」



そこまでわかりやすかったのかとちょっと恥ずかしくなったが、隠すことでもないので肯定すれば目を輝かせながら悠菜が迫ってくる。



「何って・・・・元カレといろいろあったって言ったじゃん?」

「あの山に置き去りにされた話?」

「そうそう。その時に助けてくれた人と最近よく連絡とってるってだけで・・・」

「なにそれー!詳しく聞かせてよー!え、どんな人!?」

「ちょっと声デカい。落ち着いて」



興奮して声がだんだん大きくなる悠菜をいったん静止する。さっきから周りから視線が集まってきていていたたまれない。いったん一息ついて話し出した。



「埼玉に住んでる人で走り屋。年上で、身長高くて、車のことになったら子供みたいになるけど・・・とりあえずいい人だよ」

「そっか〜!これで実はダメ男でしたってならなければいいね」

「ほんと傷口えぐるわね、あんた・・・・」

「だって亜季、いっっつもダメ男に引っかかるんだもん」

「何度目かの正直だといいけど・・・今度こっちに遊びに来るって言ってるから、崇裕くんと四人で会おうよ。同じ走り屋同士だから話合うかもしれないしね」

「いいね!そうしよう!早速崇裕に連絡する!」




そういうと早速携帯を取り出し、悠菜の彼氏で栃木でも有名な走り屋のチームに所属してる崇裕くんに連絡を取り出した。電話に出たのか悠菜が嬉しそうに私が伝えた話の内容を伝えている姿を見て、思わずこちらも笑みがこぼれる。

なんで私よりこんなに嬉しそうなのか、こういうところが悠菜の好かれるところなんだよなぁ。

悠菜が電話でしゃべっている間にご飯を食べ終え、ご馳走様と手を合わせたところで電話が終わったようだった。



「崇裕も是非だって!楽しみ〜!」

「わかったから落ち着きなって。渉さんに聞いておくね」

「うん!絶対誘ってね!」





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