あけましておめでとう
「あけましておめでとうございます!!」
「おお、来たか」
出迎えてくれたのはいつも通り煙草を吹かす文太さん。だが肝心の人物の姿が見えない。
「あれ?拓海は?」
「あいつなら寝てるぞ」
「ええ・・・」
「なんなら起こしてきてやってくれ」
「わかりました。お邪魔しまーす」
そういい慣れた様子で上がって、拓海の部屋へと続く階段を上がっていく。
そおっと起こさないように、いや起こさないといけないのだが、ドアを開けて中へと入る。
するといわれたとおり布団と毛布にくるまって眠っている拓海がいた。
「拓海、起きよ?」
そういい優しく問いかけるが反応なし。「拓海ー起きてー」と少し揺さぶってもみるが全く反応なし。
「拓海?一緒にお雑煮食べようよ」
「んー・・・」
「お参り行く約束したで・・・わあっ!」
もう一度体を揺さぶろうとして手をかけようとした瞬間、その手をがっと掴まれそのまま引っ張られた。
そして早業のようにくるまっていた毛布と布団の中に一緒に丸め込まれる。
一気に近くなった拓海の顔に心臓が止まりそうになった。
「〜〜〜〜〜っ!!!」
何かを言おうとしたがパニックのあまりただじたばたして口をパクパクすることしかできない。だがじたばたしたせいで少し眠りから覚醒したのか拓海がうなる。
「ちょ、ちょっと拓海!起きて!ねえ!」
「ん、名前・・・?」
ゆっくりと開かれた目に徐々に私の姿が映る。だがいまだに寝ぼけているのかじいっとこちらを見つめていた。
「名前がいる・・・」
「う、うん。おはよう。じゃなくて、あけましておめでとう」
「ん・・・名前だぁ」
「っ!!」
寝ぼけた顔をしていたのが、突然私が目の前にいると分かった瞬間へにゃっとした笑みを浮かべてぎゅっと抱き着いてきた。
その表情と行動があまりにも可愛すぎて胸がぎゅっと詰まる。
普段の拓海だったら絶対に見られない。
「(・・・たまにはいっか)」
そういい私も拓海の胸に顔を埋めて一緒に少しだけ眠ることにした。
あけましておめでとう
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