あけましておめでとう
「あけましておめでとうございます!!」
元旦当日。
別にポストの中に年賀状が入っているかな、なんて楽しみにする歳でもないが、なんとなく、外に出て空気を吸おうと思って玄関を開けた。
数時間前に師走も去ったところだが、まだ風も肌に触れる空気もピリピリと冷たい。
普通だったら凍えるであろう気温の中にずっといたのか、笑顔で出迎えてきたそいつに俺は言葉を失っていた。
「ちょっと、挨拶ぐらいしたらどうなのよ」
「・・・は!?え、いや、お前何してんだよ!!」
「何って・・・啓介迎えに来たの」
「いつだよ!?」
「二時間くらい前かな」
「はあ!?」
しれっというそいつに俺は心底呆れた。
そいつの顔を両手で包み込めば案の定冷え切っていて、「あったかーい」と呑気に俺の手の上に自分の手を重ねる。
「それがね、携帯忘れちゃってさ。連絡取れなくって、でもこんな朝早くからピンポンするのもあれかなーと思って。出てくるの待ってた」
「バカだな」
「・・・うん、自分でもそう思ってるから言わないで」
「ほんとバカ」
「だから知ってるって・・・」
最後まで言い終わる前に俺は気づけば名前を腕の中に閉じ込めていた。冷え切っている体は、それとは裏腹に熱を持ち始めている俺には心地よくてついつい腕に力が入る。
「・・・会いたかったからいいでしょ?」
「決めつけんな」
「・・・会いたくなかった?」
「うるせ」
どうだこれが年上の余裕だと見せつけているのか、そしてわざと俺に言わせたいのであろう魂胆がバレバレである。
抱きしめたまま頭ひとつぶんは小さい頭まで背中を丸めてかがみ、唇を重ねた。
唇まで冷てぇじゃねぇか。
「啓介」
「なに。あけましておめでとう」
「うん。ありがとう。それよりさ」
「ん?」
「寒いから中入りたい・・・」
もぞもぞと顔を埋め暖を取ろうとしている名前に愛おしさがさらに溢れ出してまた体が熱を持ち始める。
ああ、新年早々やべぇ。
「いいぜ。一緒に温まろう」
「・・・なんか啓介が言うとすっごい卑猥」
「俺はそういうつもりなんだけど」
「変態」
「男はそういうもんだ。ほら、決まったら部屋行くぞ」
「あ、ちょっと待て!」
肩に担ぎ上げ、ぽいっと靴を脱がせてそこらへんに放り出す。
そのまま抱き上げ、部屋へ続く階段を上がっていった。
あけましておめでとう
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