※降沢前提



東条秀明と言う男は金丸にとって無二の親友であり、また、愛しい恋人でもある。男同士の恋愛という縛りのあるそれは、金丸を阻むものではなくむしろ熱を上げる要因になった。秘密裏にしなければならないが、そんなものは苦ではない。東条と一緒に居られるのならば、それだけで満たされるからだ。そう、彼の事は一番大切な存在でありーー否、大切だと胸を張って言えるのは、きっと東条だけなのだ。
だから、こんな誰もいないような夜空の下、ロードワークの途中に川原に寝そべって愛を語るという事はとてもとても尊い事だと言える。
「星が見えないのが残念だね、信二」
「都会なんだから、しゃーねえだろ」
「そう言ったって、そんなに都会じゃあないじゃないか。すこしくらい、見えたっていいのに。見えるのなんかオリオン座くらいだ」
「…別にいいだろ、星なんて見えなくても、2人で居るだけで」
「…ああ、そうだ…。そうだね、信二」
そう言ってやわらかく微笑む東条はとても綺麗で、すこし見蕩れてしまう。もっと言えば、欲情した。
「…信二、なあ、降谷と沢村は上手くいっているかな」
「……難しいだろうな。降谷は素直じゃないし、沢村は鈍いし」
唐突に他の人物の話題になって、困惑した。どうしたのだろう。
「この前、言われたんだ。降谷に」
「なんて?」
「君たちは、もうしてるの、って」
どくり、と大きな心臓の音が聴こえた気がする。それと共に、顔が熱くなってゆくのがわかった。東条の顔がまともに見られない。いま、東条は、どんな顔をしてその話をしている?
「…してない、って言ったらさ、驚かれたよ。君はもっと手が早いと思った、って。それじゃあまるで、俺、変態みたいじゃんか」
「…東条…、」
「別に、俺は、しなくったっていいと思ってるんだよ。しなくっても幸せだから、俺は、」
その一言を聞いて、ばっと体を起こして金丸に覆いかぶさった。
「…信二?」
「しなくったっていい、なんて、言うなよ」
視界が潤む。声が掠れている気がして、なんだか恥ずかしかった。けれど、そのまま口を開く。
「俺は、お前としたいよ」
「…しん、じ」
驚きに満ち満ちている東条の瞳は、本当に綺麗だと思った。味気ない夜空よりも、余程。
「好きだ、好きだよ、好きだからしたいんだろ、好きだから…、したら、もっと、幸せだって、思う、よ、俺は。おまえは違うの」
「…っ」熱に浮かされたように喋っていたら、逆に押し倒されて唇を塞がれた。まるで噛み付くようなキスに、息をつく余裕がなく涎が零れ落ちてゆく。
「ん…っ、ふ、ぅ…、っっ、」
「……信二」
散々口内を蹂躙して、東条は唇をはなした。咄嗟に瞑っていた目を開くと、濃紺の夜空を背負った東条が視界いっぱいに広がっている。
「俺も、したいよ」
「…、と、」
「おまえを、抱きたい。ぐちゃぐちゃにして、俺しか見えないようにしてやりたいよ」
「…、ばか、だな」
「ばか、なんて酷いな。俺の目一杯の告白なのに」
「だって、バカだろ、」
俺はもう、とっくにおまえしか見えていないんだよ。




(だから好きにしてくれたっていいんだぜ、)



end


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はとさんの診断からネタを得ました!東金です*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
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