昼休みのすぐ後、5時間目の古典。これほど眠い授業はないだろう。現にこくりこくりと船を漕いでいる生徒が何人もいる。この教師はそれに気づいているけれど、ゆったりとした喋り方を改める気はないようだ。それなのに、試験の範囲は広いのだから嫌になる。
子守唄のような教師の解説を聞きながらひたすら板書を写していると、斜め前で倉持が机に突っ伏して寝ているのが見えた。あまりに堂々とした様に苦笑しつつ、御幸は休まずペンを走らせて行く。
どうせ、授業が終わったら真っ白のノートを見て真っ青になるに違いない。倉持のために、御幸は眠ってしまうわけにはいかないのだ。
程なく鳴ったチャイムに飛び起きた倉持は、予想通り、ノートと黒板とを交互に見て、顔を青ざめさせている。
「倉持、おはよう」
「……おはよう………」
「…ったく、ほら」
今の今まで、子守唄にも負けず必死に写していたノートを差し出す。すると倉持は目を輝かせて、いいのか、と言った。
「いいよ」
「う、わー、まじさんきゅ!!今度なんか奢るわ」
「別に良いって、そんなの」
「え、でも」
「いいの」
これは御幸が倉持のためを思って勝手にやった事なのだから、礼など必要ない。それにそもそも、御幸は礼など求めていないのだ。
「んー……、ま、さんきゅ。明日の朝には返すわ」
「おう」
流石に2コマ連続で寝てしまうのはいけないと思ったのか、次の世界史では倉持は猫背になりながらもちゃんとノートをとっていた。倉持は見た目からして誤解されがちだが、根は真面目なのだ。


**

翌日、朝練の後部室で着替えていたら、倉持にくいくいとTシャツの裾を引っ張られた。女子でも滅多にしないであろう仕草に可愛いと思いつつ、なんだよ、と振り返る。
すると、赤いポップなデザインの、菓子の箱を差し出された。
「これ、やる」
「…これ、新発売のやつじゃん。どうしたんだよ」
「……昨日、買ったんだけどな。好きな味じゃなかったし、やるよ」
心なしか、倉持の耳が赤い。嗚呼、彼はなんて素直じゃないんだろう。好みの味でなかったのなら、同室の沢村にあげるなりなんなり、他の方法もあるというのに。
まあ、そんな素直じゃあないところが愛おしくてたまらないのだけれど!
「…なんだよ、さっさと受け取れよ、御幸」
「おお。サンキューな」
「…ん」
礼を言うと、倉持はすこしはにかんだ。ああ、もう!

end


倉持にデレッデレな御幸を目指した結果がこれですね!!!!!(涙目)
チャバさんに捧げますー!


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