※ユーフォリア以前のお話。
※時系列としては、鵜久森戦の前後で。



その勝気な態度も、くりくり大きい眼も、すこし跳ねた髪も、何もかも、飲み込んでしまえるくらいに愛しいと思った。
そんなに人の事を愛しいと思ったのは初めてで、小湊とかに逐一相談しつつ、やっと告白に踏み切ったのが2日前。沢村はちいさな顔を真っ赤に染め上げて、何度も何度もどもりながら、少しだけ考えさせてくれとだけ言った。だから、素直に待っている。
沢村の態度は、すこし、変わった。僕が触ろうとすると肩を跳ねさせるし、僕と目が合うと耳まで真っ赤にして眼を逸らす。小湊に聞いた話からすると、これはもうとっくに答えが出ているのでは、と思うけれど、沢村が考えさせて欲しいと言ったのだ。ここは男らしく待つしかない。
「降谷くん、凄い顔」
「…そう?」
「うん、その証拠に、ほら、女の子たちはおろか男の子も近づいてないでしょ?」
「………ほんとだ」
怯えさせてしまったのは悪いと思う。でも、僕と目が合うたびあんなに可愛らしく顔を赤らめる沢村を見て、僕が平常心でいられるはずがない訳で。何度トイレに駆け込もうと思ったかしれないくらいだ。
「で、そんな行き詰ってる降谷くんに朗報。栄純くんが呼んでるよ、屋上で」
「…、携帯」
「降谷くん、栄純くんにアドレス教えてないでしょう」
「……あ」
「ほら、行ってらっしゃい。肌寒い中、あんまり待たせたら悪いでしょう」
にっこりと笑う小湊が、何だか天使みたいに見えたのは、きっと間違いなんかじゃない。

*

「沢村!!」
屋上の扉を勢いよく開ける。沢村は柵にもたれかかって立っていて、僕を認めて一瞬だけ、そう、ほんの一瞬だけやわらかく微笑んでみせた。それがあまりにも綺麗で、僕は見蕩れてしまったものだから、沢村が近づいて来ている事に気づかずにいた。
「降谷」
「…わっ、いつの間に」
「今さっき。……降谷、待たせてごめんな」
「…べつに」
「…んでさ、俺、よく考えて見たんだよ。告白されてから。…恋人になったらさ、手つないだりキスしたり、……、そ、それ以上の事をするわけだろ?……そういうのを………し、して、も……気持ち悪く無いかって想像してみたんだけどな」
「うん」
「気持ち悪りぃどころか……、してみたい、って思ったんだ」
「…っ」
「その……、だから、俺も、お前の事、好きなんだと……おもう」
「うん、」
「だから……、俺で、良ければ……。これから、よろしくな、…………さとる」
「………っっ!!!」
「う、わっ!!ちょ、降谷、そんなに力強くすんなっ痛い!」
「沢村」
「好きだよ」
「……ん、俺も、………、すき」
その甘やかな声を聞いて、僕はこの世界で一等幸せになれたのだと思った。



end
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