拍手ありがとうございます!
とても励みになっています!


以下【本能と運命と】シリーズスピンオフ、金吾と政次の馴れ初め第二話です、大変お待たせしました!待っていていただき本当にありがとうございます!
※1話は後日ログとして公開致します。




「勘違いしちゃってごめん!」

パンッと両の手のひらを合わせ頭を下げる彼、九条金吾は、つい先程まで振られただなんだと入ってきて、丙が不良になったと騒ぎたてた張本人だ。

「いや、大丈夫っす」

丙はと言えばやれやれというふうに肩を竦め、銀司は丙にくっついたままケタケタと笑っている。

「そりゃ、政次見た目怖いからなー!不良に見えるのは仕方ない」
「銀坊よぉ、男なら正々堂々いいやがれ、丙の影に隠れながら言っても恥ずかしいのはテメーだぞ?」
「隠れてねーし!顔見せてるし!」

動物で表すのならまさに虎と威嚇する子猫という図だが、丙はそれを止める事はせず、金吾へと話しかけた。

「政次はいい奴だよ、それに実の所金吾が知らないだけで、もう何度もうちに来てる」
「そう、なのか……でも接点が思い浮かばないぞ、その、政次くんと丙には……」

同じ学校とはいえ、極一般な生徒の丙と政次では、目付きと体格、髪型までも違いすぎて、決して素行がいいようには見えない分、金吾がそう思うのも無理はなかった。

「あー、それは、さ……」
「オメガ同士なんすよ、丙と俺」

それを聞いた瞬間の彼は、酷く驚いた様子でポカンと口を開けてみせる。
信じられなくても無理はない、しかしむしろ政次にとっては、見慣れた反応だった。

「君、が……?」
「体でかいんで、よくアルファに間違われるっすけど、発情期とかももう来てるし」

オメガとは元来、生殖にとんだ種だ。発達段階において、身長が伸び悩んだり筋肉が付きにくかったりするのはもはや常識のようなものだが、丙のように少し筋肉質であるだけでも珍しいというのに、政次程の体躯でオメガというのは、異質中の異質だろう。

「俺はてっきり、丙が銀以外の相手を連れてきたのかと……」
「そんなのは許さないから、まず敷地内にだって一歩たりとも入れない」

予想通りの反応に丙は嬉しそうに笑い、金吾は慣れたように平然としている。
政次はといえば、呆れたように片方の口角をあげただけだ。

「けど、だとしたらここアルファだらけだけど大丈夫?」
「大丈夫っす、ちゃんと発情周期把握してるし、丙からわけてもらってる抑制剤も効いてるんで……それに、ンなこと言ったら丙もじゃないっすか?」

彼に関しては、もはやいつ発情期が起こったとしても相手が銀司と定まっている、というのもあってか、周りがあまり発情期に関しては気にしていないという様子だった。
丙がどう思っているかはさておき、恐らく発情期さえくれば銀司はすぐにでも番契約を交わすことだろう、丙の金魚のフンである事が、それに関係しているかまではわからないが。

「所で金吾、振られたんでしょ?今度は何やらかしたの」
「人聞き悪いこと言うね、今回も俺に非は無いよ」

信じられないというように、同時に首を傾げた丙と銀司の仕草は、もはや兄弟以上に似ていた。

「……兄ぃの事だし、本当に私のこと好きでいてくれてるかわからない、とか言われた?」
「銀……お前の口からまだそういう話は聞きたくなかったよ、俺」
「今年だけで八回も振られて、その前から振られたらここに来てたのに、わからないわけないだろ。兄ぃの行動は理解は出来ないけど」

八回といえば、少なくとも二ヶ月に一度は振られている計算になるのだが、こんなにも見目麗しいというのに、意外な事があるものだと、政次はそう思いながら聞いていた。

「俺は付き合う子はちゃんと好きになるよう努力してるよ、エスコートもするし。ただ、俺は最終的に九条に利がある相手と結婚するつもりだから、先にそれを断ってはおくけど」

ふと、そんな会話に違和感を覚えずにはいられなかったが、丙の家に初めて招かれた時から、住む世界の違いを実感させられてばかりだ。

「好きになってから付き合えばいいのに……政次だってそう思うだろ?」

丙がまるで同意を求めるかのように問いかけたが、政次は考えるように宙を数秒見つめながら沈黙した。

「……まぁ、それが一般論なんだろうが……人それぞれだろ。お前や銀坊みてぇな連中もいりゃ、俺みてぇに興味もない奴もいる。そりゃ、好きにならないまま付き合う人間がいても不思議じゃねぇし、相手も合意の上で手酷くしてるわけでもねぇなら、俺から何か言うこたないな」

どれくらい沈黙が続いただろうか、ふと彼が言いにくそうに切り出し、けれどハッキリとそう言い切った。

「……へぇ、意外だ、てっきり同じこと言われるのかと思ったよ」

途端、金吾は一瞬驚いたように目を見開くと、何故か興味が政次に向いたらしい、面白そうに口の端を上げ弧を描いたかと思えば、瞳の奥にタンザナイトを覗かせた銀司と同じその目で、彼を射抜く。

「決めた!政次くん、俺と友人になってくれない?」

そしてなんの脈絡も無く、そう彼に告げたのだ。

「は……?いや、別に構わねぇっすけど……」

困惑したように政次は答えたが、それを聞いていた丙と銀司はといえば、その顔に引き笑いを浮かべていた。

「はい、犠牲者確定……」
「ハッキリ言わねぇからだろ、でも俺たちの面倒事が一つ減ったと俺は思いたいかな」

政次はまだ知らなかった、この後頻繁に呼び出されるようになることも、数え切れない程に彼の失恋話を聞かされる事も、挙句バイト先にまで会いに来ることなど、知らなかったのだ。




【続】







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -