依存と共存 | ナノ






いよいよ海常高校との試合だ。
部員全員で校内に入るが相変わらず広い。


私は何度か来ているので驚きもしないけど日向辺りは感嘆の声を上げている。


ため息をつくと伊月くんが頭を撫でてくれた。


「んー、どったの伊月くん。珍しいね」
「ぇ、あ…嫌だった??」
「別に嫌とかそう言うんじゃなくて、ただ珍しいなぁっ思っただけ」
「そ、そう??」
「うん。伊月くんってさ、…やっぱ言わないっ!!きゃははっ、もうなんか可笑しくなってきちゃった!」
「えー、そこで切られると気になるんだけど…」
「大したこと言うつもりはなかったから気にしなくていいよー、ってげ…」


伊月くんとお話していたら目の前に不愉快な黄色が現れた。


▼やせいの きいろが あらわれた

▼こうげき
 ぼうぎょ
 まほう
 にげる

▼つきの こうげき きいろに 20のダメージ


「ちょ、いきなり攻撃してくるとかないっスわ!!」
「うるさい、私の為にさっさと息の根止めてくんないかなぁ??」


それなりの重量を誇る私のスポーツバッグで黄色をぶん殴る。
思いっきり体に当たるよう狙ったはずなのに、避けやがりましたよ。


チッ…。


「えと、ここ広いんでお迎えにあがりました」
「必要ない、私知ってるし」


「(無視)黒子っちぃ〜あんなアッサリフるから毎晩枕を濡らしてたんスよも〜。女の子にもフられたことないんスよ〜??」
「……さらっとイヤミ言うのやめてもらえませんか」


いや、フられたことあるだろ。
なんて野暮なツッコミはしないよ、面倒くさいしねー。


あの子にバッサリフられた癖に何言ってんだか…。


あーもう、考える気ないのに黄色が目の前にいるから考えちゃうんだけど。


「…本当に考えすぎてハゲそうだよ」


***

だだっ広い校舎を若干静かになりながら歩く。


「あ、ここっス」


入口からりっちゃんが入ろうと中を覗いだら驚愕の声を上げた。


「…って、え?



……片面…でやるの??」
「もう片面は練習中だねー」


部員全員が固まっていると、海常高校バスケットボール部監督の武内監督が話しかけてきた。


「あぁ、来たか。今日はこっちだけでやってもらえるかな」
「(……)こちらこそよろしくお願いします。…で、あの…これは…??」
「見たままだよ。今日の試合ウチは軽い調整のつもりだが…、出ない部員に見学させるには学ぶものがなさすぎてね。無駄をなくすため、他の部員達には普段通り練習をしてもらってるよ」
「……(プルプル)」


りっちゃん顔やばいんだけど…。


「ねぇ、りっちゃん」
「なによ!!」
「あのねー、私たちが海常と試合できるなんて普通あり得ないよねー??去年決勝リーグに行ったとしても誠凛は、海常と練習試合組めることをありがたいと思わなくっちゃ!!…もしかしてりっちゃんは誠凛が海常と同等だと勘違いしちゃったの??」


少なくともさ、レギュラーの皆さんが調整ででも出てくれるのならいいじゃない。二軍・三軍じゃないだけマシだよー。






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