A secret novel place | ナノ
雨上がりの空を待って(1)

【雨上がりの空を待って】 There's a kind of hush


 NEXT犯罪において最も危険とされるのは、精神汚染である。
所謂精神系NEXTによってその影響下におかれたものは、その能力の種類如何問わず、専門病院での診察を必ず受けなければならない。
勿論一般市民においては義務ではないが、公的業務に従事する者、警察や司法関連の仕事に携わる者、シュテルンビルトにおけるヒーローであるのならば話は別だ。
一か月ほど前に起こった銀行強盗事件で、ヒーローたちのうち三人が『一番印象に残っている最近の記憶を消去する能力』というなんとも微妙なNEXT被害に遭った。
うちドラゴンキッドは当日中に思い出した。彼女が忘れていたものが物体だったということが幸いしたのだ。
彼女はネットで評判の肉まんを大量に発注しており、どうしようとおろおろしているうちにそれが届けられたところから実物を見て記憶を取り戻し、その日のうちにメディカルチェックを受けるだけで済んだ。
しかし、同様に被害に遭ったバーナビーとロックバイソンはドラゴンキッドのように単純にはいかなかった。
何故なら二人とも忘れたものが物理的なものではなく、どうやら何がしかの約束、形に残らないものであったからだ。
 何日間かは二人とも失われただろう自分の記憶を気にしていたが、そもそも何を忘れたのかも忘れた状態、ずっと気にしている方が難しい。
数週間が過ぎるうちに誰からも苦情が入らないこともあって、忘れても大したことではなかろうと気にすることもなくなっていた。
ただ、ずっとNEXTの影響下にあるということになると、それはそれで面倒でもある。
何故ならNEXTの影響がなくなったと証明されるまでは定期的にメディカルチェックを受け続けなければならないからである。
ロックバイソンはともかく、バーナビーは非常に多忙だったので、こんな煩わしいこと早く終いにしてしまいたいと内心思っていた。
ただ、バーナビーは思い出すことに実は消極的だった。
 何故かというと、その銀行強盗事件の数十時間前、虎徹に告白してあっさりふられていたからだった。
どうしてそんなまずい手を打ってしまったのかわからないのだが、更にその数日前に彼とルームシェアを提案してついうっかり、というところが真相だった。
 言うつもりなんか無かったのに。
言わなければずっと、きっと相棒として居心地のいいポジションで居られたのにと後々本当に後悔した。
勿論其の時はっきり告白した訳ではない。こちらもうっかりついそれを口に乗せた、本当にそこらの世間話ぐらいの程度に本音を冗談に紛らせて吐露しただけだ。
だが虎徹の反応はバーナビーを期待させるのに十分だったのだ。今まで頑なに避けていたその提案を、そのとき虎徹は笑って「だったらいいな」と言ったのだ。初めての受け入れるそぶりだ、期待しない方がどうかしている。ずっともう一年以上前からバーナビーはそれとなく虎徹にサインを出していたのだから。
いつもは直ぐに断ってくる件のルームシェアについて、この時初めて虎徹は答えを保留した。やっと受け入れてくれるつもりになったのだ、そう期待を募らせていたのがトドメになった。
満を期しての告白だと実は思っていた。彼も同じ気持ちでいてくれたのだ、と愚かしいことにそう信じてしまったのだ。
だが。
「俺はお前の事を相棒としてしか見れない」
 数日迷った挙句の返答がこれ。
何を迷うことがあったのだこの人は。
だったら最初から、期待なんかさせずに一刀両断、その場で断ってくれれば良かったのに。
そう、逆恨みしそうになった。
 勿論、そんなことは言わなかった。
あまりにも無様じゃないか、それでは僕が。
でも何故だろうと涙を零した。
だって全部錯覚だったのだろうか? 虎徹はあんなにも嬉しそうで、優しくて、一緒にいて楽しくて。
全部が全部あれが嘘だって? いくらなんでも僕でも判る。これは違う、友情ではない、愛情だ。相棒じゃない、好きで好きで好きでたまらなくて一緒にずっと居たくて、手を握っていたい、手放したくない、一緒に抱きしめあってこんなに大切で、全然気持ち悪くない。それどころかもっともっと接近したい、そう思うこの気持ちが。
 何故あなたにとっては、単なる友人という位置づけになるのか。
何故なんだ、虎徹さん、教えてください。
 それでもバーナビーは飲み込んだ。
彼が違うというのなら違うのだろう。そうなのだろうと。
そして思った。きっと忘れたのは、僕のその醜い心持だ。虎徹に対する憎しみではないのかと。
 だったら忘れて幸いだ。
何故ならバーナビーは怖かったのだ。
あんな苦しい思い――最も強い記憶をなくすというのなら、それはもしかしたら殺意では?
僕はもしかして取り返しのつかないことを考えていたのではないだろうか。
虎徹を――失ってしまうのなら殺そうと? いや振り返りもしないこの人を僕は殺そうとしていたのでは? だったらそんな思い失くした方がいい。
神様それは幸いだ。僕にとってこのNEXT被害は福音だ、思い出さない方がいいのだと。
 そうバーナビーは無意識に封印しようとしていたのかも知れない。
だがロックバイソンにこう言われて首を傾げる。
「虎徹が意気消沈しているような気がする」と。
そうしてロックバイソンが思い出し、彼は未だ思い出すことができていないらしいバーナビーにこう言った。
「なんか虎徹が公園に行きたいって言ってたんだよ。誰ととは言ってなかったけど、もし虎徹が連れて行こうとするんならお前しかいないだろ」
 そういうもんなんですかね?
と怪訝そうに聞き返すと、「少なくとも俺じゃねーだろ」と言われて少し笑った。
そうして続くロックバイソンの言葉にふっと、その言葉が蘇ったのだ。

 雨に咲く花があるんだよ

 バーナビーは思い出した。
そして真っ赤になって口を押え、震えだす。
「どうしたんだ、バーナビー、大丈夫か?」と突然顔色を変えて硬直してしまったバーナビーにロックバイソンが慌てて言う。
だが次の瞬間バーナビーは今度は真っ青になった。
 大変なことをしてしまった。

ああ、神様、どうしよう!
 そしてバーナビーは慌てるロックバイソンを尻目に走り出し、一路虎徹のもとに向かうのだ。




TIGER&BUNNY
雨上がりの空を待って
There's a kind of hush
2013年 兎虎両片想いアンソロジー寄稿作品
続編書下ろし
CHARTREUSE.M
The work in the 2016 fiscal year.


 失っていた記憶を取り戻した後、バーナビーは本社に戻って虎徹がまだ出社していないと事務のおばさんに怒られた。
ミスを注意しても暖簾に腕押しの虎徹自身ではなく、バーナビーにした方が後々予後がいいとおばさんが学習した結果だったのだがそれはどうだろうとバーナビーは思う。
だがそのおばさんへの文句は後回しにしてバーナビーは「記憶を取り戻したので、メディカルチェックの予約を入れてください」と頼んだ。
おばさんはそれだけで要領を得たようで、「じゃあなおさらタイガーを連れ戻してきて」と言われてその場を飛び出す。
PDAで呼び出しても良かったのだが、GPSで表示された場所を知って驚いたからだ。
それと同時に身体が熱くなった。
そう、虎徹もまた同じ気持ちで自分を見ていたのだとそれもまた思い出したから。

告白する少し前、一緒に昼食をとっていたときのこと。
「雨ばかりでつまらないですね」
散歩も面倒だし、公園だってこの雨じゃ楽しみようがない。虎徹さんもそう思うでしょう?
 晴れたらセントラルパークでいいので散歩に行きましょう。
そういうと、虎徹は「判ってないなあ」と笑った。
「雨の日に散歩した方がいいところもある」
「へえ?」
「日本だと、ワビとかサビとかいうんじゃなかったかな。ま、そこらは折紙が詳しいだろうけど、そーじゃなくてもっと単純に。植物公園あるじゃん、シュテルンビルト郊外だけど、今度行ってみるか?」
「植物公園なら猶更晴れてる方がいいんじゃ」
 ちっちっ。
虎徹が得意げに人差し指を振った。
「この季節、雨降ってないと見れない景色もあるんだぜ?」
「そりゃああるでしょうけど、別に雨じゃなくてもそういうところは綺麗でしょう」
「そーじゃなくて、雨の中にある方が綺麗なものもあるんだよ」
「?」
 雨に咲く花。
そんなのは雨が降ってたら全部雨に咲く花になるでしょう? と言ったら虎徹はばーか、と言った。

 恐らく虎徹はそこにいる。
「セントラルパークにも少しは植わってるみたいなんだけど、一株二株ぐらいじゃ微妙なんだよなー」
 そういって検索をかけたスマホをバーナビーに見せてくれた。
しかしそこにあったのは花ではなく緑色の葉っぱの塊で、「どこが花?」とバーナビーは当惑するばかり。
「これはまあまだ咲いてない状態だからな。もうちょい季節、後かな」
そう言っていた虎徹の少し寂しげな横顔を思い出しながら走る。
セントラルパークで数株だけ植わっていると彼は言っていた。沢山なければ意味がない、もっとずっと沢山それが咲く場所へ一緒に行こうと。
 果たして虎徹はそこにいてくれた。
じっと、まだ少ししか花開いていない紫陽花の株に目を落として佇んでいる。
 名前を呼ぶとびっくりしたように自分を見た。見てくれた。
そうしてバーナビーは思うのだ。
ああ、本当に僕は彼の何を見ていただろう?
「今からでも遅くない、無かったことに――」
 そう震える声で言われて、この人はどれだけ僕のことを好きでいてくれたろうと思った。
あんな酷いことをしたのに、何も言わなかった、忘れた僕に何も言わなかった。
それはどれだけの思いやりだろうか?
 神様、彼は僕を愛してる。

 それから二人で確認した。
互いに互いを大切に思う気持ちを確認して、バーナビーは怯まないと伝えた。
勘違いでもなんでもない、正真正銘の本気の僕の気持だったのだと。
突き放すのが貴方の優しさだということは良く判ります。
でも、その優しさは見当外れだ。
僕が思う気持ちを嘘にしないで欲しい。もし僕を大切に思うのなら、どうか。
「でも酷いことをした。許してください」
 虎徹はただ頷いた。

そしてその日から、二人は元通りになろうと努力した。
だが、元通りになるのは少し難しかった。
何故なら友人であり相棒でもあるけれど、互いが気持ちを確認しあった今、未知の領域――新しい二人の関係へと踏み出してもいたから。
 だがとりあえずはまあ、元の位置に……。
虎徹の哀願もあって、行き来を制限していたのだが、まずそれを元に戻した。そこからして多少の抵抗があった。
虎徹にとってもこの関係の進展は、本当に勇気が必要なことだったに違いない。
「判らない、あり得ない」時折そう漏らす彼にとってこの関係はどうにも受け入れがたいものでもあったのだろう。
バーナビーはそれについてとやかくいうつもりはそもそもなかった。
自分よりも10歳以上も年上の男にとっては屈辱的なことでもあったろうから。同じ男性としてすんなりと理解できる事柄だったからだ。
それでも虎徹は自分の部屋にまたバーナビーを招き入れてくれるようになったし、バーナビーの部屋にも泊まっていくようになった。
さてそして再び数週間が過ぎ、こういうのはどちらからというものではなくく、単なるタイミングというものなのだろう。
 何故かその日、バーナビーは今日だ、と確信した。
そして虎徹の様子も少し普段と変わっていた。
部屋に入るなりまずネクタイを外し、襟元を広げて少しラフな格好に。
 床で二人して座り込んで少し飲んで、酔っぱらってもいないのに、ちらちらと窓の外に虎徹は頻繁に視線を向ける。
だがバーナビーとは目を合わせようとはしなくて、バーナビーも一気に緊張が高まってきた。
 こういうのは落ち着かない、少し怖い。
突然虎徹が立ち上がった。
顔をそむけたまま、バーナビーの手を徐に取ると立ち上がらせそのままベッドルームへ。
バーナビーは心臓が飛び出そうになった。まさかこういう風に虎徹が誘ってくるとは思わなかったからだ。
弥が上にも期待に盛り上がってくる。
 しかし、虎徹はベッドを指さすと、何故かバーナビーにそこに座るように言った。
「?」
 あれ? なんだろう? と釈然としないものを感じつつ、バーナビーは素直にベッドに腰掛ける。
続いて虎徹がベッドの上にのし上がったが、何故かその場で正座。バーナビーにもこっちに正座してくれと指さした。
「……?」
「大変申し訳ないんだが」
 とバーナビーが正座するのを見計らって虎徹はそう切り出した。
「俺は今まで野郎と付き合ったことがない。ましてや抱いたことはあっても俺自身が抱かれた事がない」
「あ、はい」
 バーナビーが頷くと、虎徹ははっと気づいて「お前以外に」と付け足した。
「だからいやだという訳じゃない。納得してるし俺自身も嫌いじゃない。お前のことが好きな気持ちは嘘じゃない」
 だがな、と虎徹は一度言葉を切り言いにくそうに続けるのだ。
「だが、正直俺は怖い。何故かというとだ、ダメージが半端なかったからだ。お前には言わなかったが、あの後俺、つい最近まで不自由してたんだ。あー、まーそのちょっと切れたんだ。多少は我慢するが正直、慢性化するのだけは避けたいんだ。というわけで俺は多少調べてみた。そこで気づいたんだがよ、お前はその……あんまり経験ないだろ? 男は俺が初めてだったんじゃないか?」
 バーナビーは真っ赤になった。
あー、はいまー、そうですね、ええ。すみません、僕あの時は相当酔っぱらっててその……ほんとに無理強いしてしまって……。
「経験についてどうこう突っ込むつもりはないけどさ、お前その、男同士のやり方って知ってる? 調べたことある? なんか俺も考えたことがなかったんで今回初めて調べたんだけどよ、えらいなんか大変らしいんだよ。女と違って手の込んだ準備が必要らしいんだ。それを怠ってやると、まあ多分前回と同じことになる」
 無理強いじゃなくても、こっちが同意してても結果が一緒みたいなんだよな。
「なんつーかバニー、お前その切羽詰まってる顔しててもう我慢も限界だろうと俺も思うんだけどもよ、申し訳ないが、ちょっとそこらへん考慮してくれないか」
 虎徹は言った。
「本気で挑んでこられたら、俺多分次の日立てなくなると思う」
「そんなにですか?!」
 驚いてバーナビーが虎徹を見ると、虎徹は真顔で頷いてきた。
「ああ。俺はお前と付き合うことを了承した時点で覚悟は決めた。ただ、それによってヒーロー活動に障りが出るのはまずいと思うんだ。判るだろ?」
 判ります、ええ、でも――。
バーナビーはちょっと涙ぐんだ。
虎徹を抱けると期待していたから。この人と繋がれたらどんなに幸せなことだろう?
あんな辛い無理強いの記憶ではなく、互いに互いを大切に求め合えたら、それはきっと以前の数倍素敵なことに違いない。
だが虎徹曰く、同意してようがしてなかろうがダメージはあまり変わらないらしい。
 ではどうしたら? とバーナビーが言うと、やはりある程度その、俺の体に負担をかけない方法を学んでからにして欲しいんだよと虎徹は言った。
その真剣なまなざしからして、バーナビーはよっぽど酷かったのだろうとやっと思い至った。
自分自身はなんともなかったのでただ浮かれていただけだったが、虎徹の方はいろいろ思うところがあったようだ。
バーナビーは項垂れて、すみませんと蚊の鳴くような声で呟く。
 ちなみにどれぐらい、その、お体に負担が? 
と聞くと、虎徹は暫く逡巡していた後、こう端的に言った。
「すっごく痛かった」
「あ、は、はい、すみません……」
「なんかマジ、痛かった。でけーくそしたことがあるから大丈夫だとか思ってたけど全然そういうレベルじゃなかった。裂けたんだよ、比喩じゃなくてよ。あの日出動あったけど、辛かったわ。二三日、ケツが痛えってそればっか考えてたわ」
「なんかすみません……」
「しかもその後クソする度にまた裂けんのよ、ホント参った。でな、悪いけど折角治ったところでさ、頼む、ちょっとそこらへん考慮して」
「はい」
「ごめんな」
「いいえ」
 それから二人は暫くベッドの上で正座していたが、虎徹が力を抜いてバーナビーの胸の中に倒れこんでくる。
虎徹はそのまま大きく息を吐いた。
「ほんと、ごめんな」
「僕の方こそ全く思い至らなくて――すみませんでした」
 そうじゃなくて、と虎徹は言う。
「なんかさ、嫌われるかなって思った。そういうの、お前我慢できなそうだったから」
 バーナビーはちょっとムッとした。
「そんな……、僕そんなにダメな感じですか?」
「そうじゃなくて!」
 勘違いするなっつの、最初からそうじゃないって言ってるだろ。俺だって結婚までしてたんだぞ、大好きな奴とやることやりたいって思うのは当然なんだ。
俺、友恵に同じように告白してさ、でも俺NEXTだったから、あいつのご両親にも反対されたし、うちの親だってあんまりいい顔しなかった。
それでも友恵が受け入れてくれて、さらってどこかに行こうかって思ったよ。でもそれじゃダメだって、友恵が言った。
 だったらそれは約束なんだろうって――まあ、そういえばなんかカッコいいけど、まあなんだ、既成事実ってやつだよ。
友恵はちゃんと受け入れてくれた。まあでも俺も経験なかったんで大分かかっちゃったけどさ、それでもさ。
「俺が女だったらこんな面倒なことにならなくて済んだのにな。覚悟だけでいいんだからやっぱさ」
 バーナビーは虎徹の言いようが余りにいじらしくてつい笑ってしまった。
「笑うなよ、俺だってどんとこいってやってやりたいけどさあ、滅茶苦茶痛かったんだよ、あれをもう一回耐える自信がない。情けない話だけど。俺怖くて大分逃げ回ってただろ、ごめん」
「もしかして、それでその、ずっと躊躇してたってことなんですか?」
 バーナビーは呆れた。そしてついに吹き出す。
自分を抱きしめながら笑い出したバーナビーに、虎徹は頬を膨らませて抗議した。
「これから先、ずっと付き合うんなら考えなきゃいけない問題だったんだよ! 大問題だったんだからな!」
「もっと早く指摘してくれれば良かったのに」
「恥ずかしくて言えなかったの!」
 判れよ!
と怒られてバーナビーははいはいとまた抱きしめる。
「虎徹さんが付き合うのはいいけど、プラトニックで、というタイプでなくて良かった」
「んなわけないだろ」
「どうかな。割合日系人はそういうところ淡泊だって聞きましたけど」
「年齢的にもがっつくようなことはないけどな、でも俺だってやることはやりたいよ」
「慣れてくれば同性のほうが気持ちいいって聞いたことがありますね」
「誰からだよ」
 それには答えず、バーナビーは「痛くないことならしてもいいですか?」と聞く。
虎徹は一瞬ぱっと顔を上げたが、参ったなあというように視線を反らしながら真っ赤になって頷いた。
「なんていうか虎徹さんて、時々奇妙にかわいらしいですよね」
「それほめ言葉じゃねーから」
 そうですね、と笑いながらその耳元に囁く。
「キスしても?」
「いいぜ」

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