バンパイヤ | ナノ
バンパイヤ 6.犠牲(5)


 傍らで眠るバーナビーをじっと見つめ、その金髪を優しく撫でながら虎徹は身体を起こす。
ヒトであるということ、ヒトである悲しみ、そして枷。
ヒトに生まれ、ヒトでしかないバーナビーに、今すぐその禁忌を超えろというのは無理な注文だろう。
それでも、虎徹にはこの美しいヒトの魂が、自分の無二のリーダーが、自分を確かに愛してくれようとしているのを知っていた。


 もし、バーナビーが、獣であったのなら、 お前が俺を愛していて、手に入れたいと、ヒトが恥じるべき欲望を俺に抱いているということを、認められたろうに。
それを知られたら、俺が軽蔑すると、ヒトが信じている、馬鹿げた羞恥心がどれだけ的外れだか理解ったろうに。
でも、彼はヒトだから。
ヒトでいたいという、バニーの望みを、俺は自分の意志で捻じ曲げてはならないと思う。
ヒトは己にだけは真に自由であるべきなのだ。 だから俺は指摘も疑問も投げかけず、ただ、バニーの傍にいたい。
お前がどんな欲望を俺に抱いていたとしても、等しく俺は許容できるだろう。 何故なら俺は獣だから。
そして、ヒトにはけして理解出来ない、真実公平な精神世界を築く者であるのだから。
愛してる、お前の全てを、俺にとって都合の悪いなにもかも、それをひっくるめて愛しているよ、バニー。
お前は、俺が放浪の果てに二度と見つけることが出来ないと思った、ひれ伏すほどのカリスマ。
お前自身一生認められなかったとしても許せる、俺にとっては真のリーダーそのものだったのだ。
だから。

だから俺は、お前と言うヒトを、獣として裏切ろうと思う。



[ 21/115 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
【Novel List TOP】
Site Top
←back
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -