バンパイヤ 6.犠牲(5) 傍らで眠るバーナビーをじっと見つめ、その金髪を優しく撫でながら虎徹は身体を起こす。 ヒトであるということ、ヒトである悲しみ、そして枷。 ヒトに生まれ、ヒトでしかないバーナビーに、今すぐその禁忌を超えろというのは無理な注文だろう。 それでも、虎徹にはこの美しいヒトの魂が、自分の無二のリーダーが、自分を確かに愛してくれようとしているのを知っていた。 もし、バーナビーが、獣であったのなら、 お前が俺を愛していて、手に入れたいと、ヒトが恥じるべき欲望を俺に抱いているということを、認められたろうに。 それを知られたら、俺が軽蔑すると、ヒトが信じている、馬鹿げた羞恥心がどれだけ的外れだか理解ったろうに。 でも、彼はヒトだから。 ヒトでいたいという、バニーの望みを、俺は自分の意志で捻じ曲げてはならないと思う。 ヒトは己にだけは真に自由であるべきなのだ。 だから俺は指摘も疑問も投げかけず、ただ、バニーの傍にいたい。 お前がどんな欲望を俺に抱いていたとしても、等しく俺は許容できるだろう。 何故なら俺は獣だから。 そして、ヒトにはけして理解出来ない、真実公平な精神世界を築く者であるのだから。 愛してる、お前の全てを、俺にとって都合の悪いなにもかも、それをひっくるめて愛しているよ、バニー。 お前は、俺が放浪の果てに二度と見つけることが出来ないと思った、ひれ伏すほどのカリスマ。 お前自身一生認められなかったとしても許せる、俺にとっては真のリーダーそのものだったのだ。 だから。 だから俺は、お前と言うヒトを、獣として裏切ろうと思う。 [mokuji] [しおりを挟む] Site Top ←back |