Novel | ナノ

S.O.S. H-01 type-K -PI(1)

【S.O.S. H-01 type-K -Part Instrumental】



序章



バーナビーさん、連絡が遅れてごめんなさい。


実家で静養をしていた、私の父、鏑木・T・虎徹ですが、10月31日未明、亡くなりました。

もっと早く連絡したかったのですが、私のほうの気持ちが駄目で、どうしても連絡できませんでした。
本当にごめんなさい。
どう謝っても許してもらえそうにないと思います。 私は、今とても後悔しています。
本当にこれで良かったのだろうかと・・・。


最初に父に起こった親指の痺れ、最初はこんな些細なことでと父も思っていたそうです。
しかし、見る見るうちに、全身に痺れが広がり、父は歩くことも不自由になってしまいました。
その為、一時静養ということでオリエンタルタウンに帰宅した父ですが、実はあの後すぐに入院していたのです。

バーナビーさんに連絡するなと言ったのは父です。
私は最初、それはどうかと思っていたのですが、父の強い要望だったこともあり、バーナビーさんに連絡しませんでした。
どうか、父の意向を汲み取って、許していただけたらと思います。

父は、最後の最後まで希望を失わないと言っていましたが、父を襲った病魔の正体は重症筋無力症に分類されるもので、その中でも最も死亡率の高い、「成人第III型」と呼ばれるものでした。
父が患ったこの病魔の進行は残酷なほど早く、あらゆる延命措置を試しましたが全て無駄で、呼吸筋を侵された父は、それから程なくしてこの世を去りました。

父は、最後までバーナビーさんのことを気にしていました。
1分間しか能力がもたなくなった今、こうやってヒーローをやり続けていられたのは、ひとえにバーナビーさんが居てくれたからだと。
そして、自分はバーナビーさんとバディを組めて、本当に幸せだった、バーナビーをもうサポートしてやれない、一人にしてしまうと、最後の最後まで心配していました。
父のあなたへの最後の言葉は、「一人遺してごめんな、そしてありがとう」でした。


バーナビーさん、本当にごめんなさい。
許してください。

父の遺体は、11月3日に荼毘に伏しました。 通夜も葬式も全て終わっています。
もう、全て終わったのです。

父が亡くなったことを、2ヶ月近くも隠しておいた私たちを許してください。


最後に、私があなたに託したいものがあります。
アポロンメディアメカニックの斉藤さんが、是非私にと、多くの犠牲を払って下さったものですが、正直、私はもうこれを手元においておくのが辛いのです。
斉藤さんが私にこれを所有することを許してくださったときから、鏑木家で基礎事項は全て学習させました。
もしかしたら、バーナビーさんにとっても非常に辛いものかも知れません。

それでも、私はバーナビーさん以外に、これを託したくなかったのです。
最後まで、ご迷惑をおかけします。 そして私の我侭をどうか許してください。
そして、これを受け取ってください。

恐らく父は、これをあなたが所有することを、一番喜んでくれると思うからです。

そしてどうか、これを大切にしてあげてください。

バーナビーさんがこの先幸福でありますよう、心より祈っています。

鏑木 楓

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