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Call me 君の名を呼ぶ(13)




 通路を転落していく。
うっしゃあ、こうでなきゃ。 さて、全力で成仏するか! しかし、いや待てよ?
てっきり自分は天国へ行くのだから登っていくのだと思っていたが、なんだか落ちているようだ。
えー、今更地獄行きなのか俺、と少ししょんぼり思う。
まあ、別に地獄行きでも構わないのだが。
あっ、でもバーナビーが天国だったらまずいぞ。 大体友恵は絶対天国だし、このままあの世でも泣き分かれとか、ないよなーなどと勝手なことを思って少し腹をたててもいたり。しかし、目の前に突然現れる金の光。
それは、恐ろしい勢いで虎徹の傍らを通過し、長々と暗闇を貫いて一本の光の束となった。
 何かに似ている。
ああそうだ、光の超特急だ。
まるで、天国と地獄をつなぐ、光の列車のように。

その光の列車の向こう、佇む女性の姿が見える。
虎徹にはそれは最初、まるで天国から迎えにきた、友恵の姿に見えた。
しかし、違う。
流れる髪は黒ではなく、やや茶色かかっており、瞳はうっすら藍色をしていて。
そして友恵よりも幾分背が高く、とても健康そうな小麦色の肌をしていた。

知枝・・・?

 くすりと、彼女が笑ったと思う。
彼女は光の列車が走り続けるトンネルの中、深々と虎徹に頭を下げた。

ありがとうございます。
私のN.E.X.T.は、私自身に連なる過去へ干渉することの出来る能力です。
私自身の血に連なる、時間線に手が届く能力者です。
しかしそれは、奇跡と絶望と悲しみと由来と、全て線上に見えているのに、自分の遺伝子の流れに関係ない者には、手を出す事が出来ない悲しい力です。
でも、私は自分の血筋に一つの可能性を見ました。
私の祖先には、バーナビー・ブルックスJrのパートナーだった人がいるって。
玄祖父がそうだって。
なので、貴方なら、あの孤独で可哀想なバーナビーを救って上げられるかも知れないと思ったのです。

私の血筋には、この血統を守るために犠牲になった血脈がある、そう知ってしまった時に、私はどうすれば、こんな悲しいことを無くせるのかどうかを考えてきました。
そして私は一つのチャンスを得ました。
時間線を何度も何度も辿るうちに、この悲しみの出発点を特定する事が出来たのです。
貴方の意識を肉体から切り離して、私たちの時間軸へ出現させるために必要な、そう、貴方が死にかける一瞬。
私たちの未来へ繋がる、決定的な運命のその瞬間を、私はついに捕まえることが出来た、そう、この物語の始まりを。

そうして今、貴方の大切なひとの血統は、貴方の手によって、未来守られました。

この未来を、貴方の未来にするかどうかは、貴方次第です。
貴方の意識を未来へ飛ばすことによって、僅かながら時間線の流れに差異が生じました。
その差異を私は利用して、小さな贈り物をすることにします。

さあ、貴方の時間軸へ帰って、そして大切な人の為に目を覚まして!

ありがとう、私たちは違う明日へ向かうけれど、貴方はどうか、その手を放さず、貴方の大切な人を守ってあげてください。
これが、私が貴方へ贈れる、最初で最後の一度だけの奇跡です。

 虎徹は悲鳴をあげた。
突然何かにひっぱられるような感覚。 そのまま、背後を走りぬけていく、新しい光の列車の中に吸い込まれる。
その列車は猛烈なスピードで、知枝の居る場所とは違う、別のトンネルへと向かっていた。
遠く手を振っている。
知枝が、俺の玄孫が、ずっと手を振り続けている。
そして虎徹の耳に、彼女のささやきが届いた。


 私の血が叫ぶの。
虎徹君を幸せにしてあげてと。
彼はこれから、幸せにならなきゃ。
貴方の未来を、あなた自身を、ねえ私ほど愛した人はいないでしょ? 


 ありがとう、虎徹君。




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