Novel | ナノ

Call me 君の名を呼ぶ(1)

カウンターリクエスト作品

TIGER&BUNNY
【Call me 君の名を呼ぶ】The cat which is not tamed.
CHARTREUSE.M
The work in the 2012 fiscal year.




opening NC1981


 来週はバーナビーの誕生日だ。
虎徹はそれを空に翳して、目の前にもってきて開けて、眺めて笑顔になる。
顔がにやけるのが止められない。 どうしよう、どれだけ喜ぶだろう。
近頃のバーナビーはやけに可愛い、なんにしてもとても柔らかく笑うようになった。 幸せだと口に出して言うようになった。
自分も相当回り道したけれど、今は本当にバーナビーを大切に思う。
楓もついに首を縦に振ってくれた。 兄である村正は最後の最後まで反対していたけれど、バーナビーと引き合わせて暫く後に何も言わなくなった。
母の安寿は複雑な顔をしていたけれど、なんにしてもあんたらがそれでいいならもう何も言うことはないと了承してくれた。
 バーナビーは元々ありえない関係なのだからと、最初から考えても居なかったという風情で、多分それは自分自身の優柔不断さも手伝っての諦めだったのだろう。
でも大丈夫。 俺は悪いが、決めるところはきちっと決めてきたつもりだ。
まーなんだ、俺も俺なりに葛藤があって色々往生際が悪いところがあったのは認める。
家庭環境の違いやら、これが愛だの恋だのと陳腐な言葉で片付けられるものであったらどんなに楽か、とか、お前が女だったら一挙に全部解決だったのにとか、うだうだどうしようもない事で踏ん切りをつけるのに1年以上かかったのを認める。
 でももう大丈夫だ。
今度こそサプライズだぞ、バニーちゃん。

 その日は結局一日中ニヤニヤしていて、バーナビーに「大丈夫ですか?」と何度も聞かれた。
「何かいいことでもありましたか?」
 あったあった、凄くいいこと。 正確にはこれからいいことがあるんだけどな!と、その言葉を胸に飲み込んで。
バニー、幸せになろうな?
何言ってるんですか、僕は今でも充分幸せですよ。
翡翠の瞳で振り返る。
 ああ、本当に優しくなった。
お前がそんな風に笑えるようになった事を、俺は心から嬉しく思うよ。
願わくば、どうか。

「虎徹さん!」
 その絶叫の意味に、虎徹は暫く気づけなかった。
へっ? と間抜け面で空を振り仰ぎ、なんかとても四角くて長いものが、空一面に広がってるだなんて、悠長に思ったのだ。
 ゴールドステージのプラットフォームが崩壊、シルバーステージの支柱を圧し折り、街を支える杭が無数に事故現場一面に降り注いできた。


NC1981年10月末、その未曾有の大事故は起こり、市民のみならずシュテルンビルトを守る、8人のヒーローたちも重軽傷を負った。
ワイルドタイガーこと、鏑木・T・虎徹はこの事故により重態に陥り、同年10月31日にこの世を去ることとなる。






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