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喪 失(1)

TIGER&BUNNY R-18
【喪 失】I am sorry to have forgotten you.





 序 章


 その最初の兆候は、虎徹が自分のことをバニーと呼ばなくなったことだった。
正直、その程度のこと、バーナビーは特に気にしていなかったのだ。
むしろ、バニーという愛称を呼ばず、バーナビーという正式名称を意識的に呼んでくれるようになったのかと思い、逆に嬉しくすらあった。
 バーナビーは虎徹のことが好きだった。
だから普通に好きだと言ったとき、彼が自分の頭を撫ぜてくれたことや、その後どれだけの愛情を込めて自分の名前を呼んでくれていたとか、そんな風にバーナビーの想いひとつひとつに虎徹が応えてくれたことが、何よりも嬉しかった。
 しかし、一度バーナビーを含む、7人のヒーローたちは、虎徹の事を忘れた。
それはマーベリックという、サイコ系N.E.X.T.、記憶改竄能力者の仕業ではあったが、思い出してくれと叫んで逃げ回る、虎徹を残酷に追尾して痛めつけたのは確かにヒーローたち全員だったのだ。
 特にバーナビーは最後の最後まで虎徹の事を思い出せず、情け容赦なく傷つけた。
結局、バニーという、気に入らなかった呼び名に触発されて、なんとか思い出すことが出来たものの、バーナビーはその事を思い返すと居た堪れない気持ちになる。
 綺麗な稀有の蒼琥珀瞳(ブルーアンバーアイズ)。
自分を見つめていた普段は金色をしているその瞳が、蒼ざめながらも鮮烈に輝いて、バーナビーに訴えていた。
誰よりも何よりも愛した瞳だったのに、本当に一欠けらすらも思い出すことが出来なかったのだ。
 気にするなと、彼が言う。
バーナビーも気にしたくはなかった。だから意識的に忘れようとしていたのかも知れない。
だから、取り返しがつかなくなる、その曲がり角を、虎徹は密かに曲がってしまったのだ。
 バーナビーが気づいたとき、虎徹の中ではヒーローと、生身の彼らとの存在が、見事に分離してしまっていた。

バニーは忘れ去られてしまった。

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