運命の青いNEXT(12) 「あっ、あのッ!」 起きて暫く恐慌状態に陥ったのを虎徹は何かNEXTに関係あるのかと思ったらしく、本当に心配そうにバーナビーをぎゅっと抱きしめた。 虎徹にしてみたら落ち着かせるためにしたつもりだったが、バーナビーの身体の中に入っている精神がカリーナだったせいで余計にパニックになった。 結果、カリーナは全力で虎徹を押しのけてしまい、バーナビーの身体はベッドから転げ落ちた。 「バニー!」 どうしたんだ、大丈夫か、具合が悪いのか? バニー、お願いだ答えてくれ。 そう虎徹に肩を掴まれて揺さぶられてやっと我に返る。落ち着け、落ち着いてブルーローズ、この異常事態を悟られたらまずい。ああでもどうしよう・・・。 「あたたたた・・・」 「バニー、お前――」 そんなに嫌? そう聞かれてカリーナはびくんと竦みあがった。なんて表情をするんだろう! しゅんとした子供のように傷ついた顔をして虎徹は言うのだ。 「ごめんな、独断で・・・。でも今日だけは我慢して欲しい、俺を傍に置いといてくれ。ベッドも嫌かな、シーツは一応取り替えたんだけど――」 「違う! そんなことないわ――じゃなくてそんなことないですっ」 カリーナはぶんぶんと首を横に振った。 「むしろ傍に居て! じゃなくて居てください!」 「そ、そうか?」 バーナビーの剣幕に虎徹は首を捻りながらじゃあ、今日俺はソファで寝るからという。 ベッドが一つしかないからそうなるのかとカリーナは普通に納得してその後の虎徹の言葉に「えっ」と声を上げる。虎徹の怪訝そうな瞳がまたひたとバーナビーに向けられた。 「お前んちのベッドは凄く広いからさあ、一緒に寝てもいいけどさすがに俺んちのはナァ」 「ちょっと待ってよ、あんた達いつも一緒に寝てるの?! 同じベッドで?!」 「はあ?!」 虎徹がまじまじとバーナビーを見て、カリーナはしまったと思った。 「あっ、すみません、僕ってあのいつもタイガー、じゃなくて虎徹さんと一緒のベッドに寝てるんです・・・か・・・よね?」 お前ホントに大丈夫か、記憶障害もあるのかと虎徹がにじり寄ってくるとバーナビーの額に額をくっつける。カリーナは泡を吹くかと思った。 熱はねぇよナァ・・・と虎徹は口の中で言い、バニー、お前がもしおかしくなっても俺は大丈夫だから。ホントに大丈夫だからな。傍にいるから包み隠さず言え、頼ってくれと言った。 それはおいといて。 「いつも一緒に寝てる――」 「嫌だったか? なんかお前何時も何も言わないからあれでいいんだと思ってた。嫌なら今度からよすよ。つーか俺が先に床で寝ちまうのが悪いんだよな、ごめん」 近頃酒にめっきり弱くなったからなあと言う。 カリーナはくらくらした。ちょっと何よハンサム、既に物凄く危険じゃないのよ、アンタ! そしてずるい! ありえない! 「じゃ、俺はソファで・・・・・・」 「シングルでも大丈夫よッ」 カリーナは反射的に絶叫していた。 あれっ?と心の片隅で思ったがもう遅い、そのまま願望を捲くし立てていて止まらない。もういい。今日は私はバーナビーなのだ、それに謎のNEXTにかかってるんだもん、タイガーに責任取ってもらうのよ! 「シングルでも大丈夫ですっ! わた・・・じゃなくて僕お察しの通り今日凄く変なので! これ以上おかしな行動を起こさないように寝てる間も見張ってて下さい!」 「お、おう?」 虎徹がじりっとたじろいで、その時PDAが鳴った。 虎徹がコールを見て慌てて立ち上げると、PDAに出たのはブルーローズ、カリーナだった。 妙な気分だわ、自分をこうやって画像として見るだなんて。 「ブルーローズ!」 虎徹が心底嬉しそうにPDAに言った。 「大丈夫か、具合は、どうだ。おかしなところないか? 倒れたりしてないか」 「はい、大丈夫です」 カリーナが淡々と言う。 あ、間違いなくこれハンサムだとカリーナは思った。 そうかそうかと虎徹が何度も頷いて、本当に何かあったら連絡してくれと念を押す。それから虎徹は直ぐに自分の携帯電話番号と、メールアドレスを送信した。 「プライベートなのはこっちな。PDAはあまり頻繁に使うと怒られちまうから。うん。・・・そうだな、うん」 何時でも連絡してくれ、それとブルーローズ今度奢らせてくれよ。前みたいにバーじゃなくて、ちゃんと食事に誘いたいんだけど駄目かな。え? 前のバー? 憶えてないの? 俺印象薄いなあ・・・。 虎徹が頭を掻く。 虎徹は気づいてなかったが、カリーナには解った。自分の茶色の瞳が今PDAを通してバーナビーを睨んでいる。バーナビーが怒っているのが解った。PDAで見た表情から察したのではなくて接続された精神が共鳴するのだ。 ――貴女、何時の間に虎徹さんと?! 侮れない・・・、なんてことだ。 違う違う、たまたまなのよッ! しかも2年以上前っ! それっきりなのよッ!と 脳内で弁解していたがそれはやはりバーナビーには伝わらなかったようだ。 じっとりと睨まれている・・・。私が私に――と思ったところで、虎徹がバーナビーに――カリーナにPDAを見せてきた。 「ブルーローズも元気みたいだ。このまま解除されるといいな。良かった」 良くないよ。 ――良くないです。 二人同時にそう思ったが、二人ともにっこりと笑った。 「ええ、元気そうで何よりです――だわ」 「そうね、じゃなくて そうですね、全く何事も無くて良かったです」 虎徹がうんうんと嬉しそうに頷き「じゃあ、また明日な、うん、ジャスティスタワーで」と言ってPDAを落とす。 その時二人には聞こえた。 そう、今二人の恋路を賭けて、戦いのゴングが鳴った。 [mokuji] [しおりを挟む] Site Top |