生まれた世界では特に病気もなく元気に育ってきた。無駄に元気な身体は風邪ですらほとんど引かない程。それが、どうだろう。



「大丈夫か」



ありがとう、と口に出してみるがうまく声にならない。ベッドに横になる私を見下ろしているゾロが額に乗ったタオルをかけ直してくれる。
昨日のお昼を過ぎた辺りから身体に違和感を感じていた。最近よくあるダルさで特に気にしていなかったが、時間が経つにつれて酷くなってくる。朝になってナミとロビンが私の体調の悪さに気付いてくれて、胃に優しい食料が無いと寄る予定のなかった島に立ち寄ってくれて、サンジが色々買いにいってくれている。何だかとても申し訳ない気持ちだった。チョッパーも薬草を買いに行き、ナミやロビンもついでだからと次の島の情報を集めに行った。ウソップも新しい武器を開発すると出ていった。そしてゾロは「用事がねぇ」と残ってくれている。いつもいつも申し訳ない。



「熱測ったか?」



首を横に振るとゆっくり立ち上がって体温計を探してくると部屋を出ていった。熱は朝に一度計ったっきり。
体調が悪くなると皆はまず“あの時”のような症状じゃないかと心配をしてくれるのはいつものこと。熱を計ってチョッパーに診察をしてもらってだいたいいつも“風邪”だと診断される。あっちの世界とは違い、こっちでは時間ごとに気温や気候が変わることもあってよっぽど強くてタフな身体をしていない限りは仕方がないと言ってくれた。逆に元気すぎる他の皆がおかしいくらいだ、とも。



「あれ?むーちゃん一人か?ッたくあのマリモ野郎面倒見るとか言って…」

「違うよ、ゾロは体温計探しにいってくれてるだけ」

「体温計ねェのか?」

「この部屋にはないみたい」



ゾロが体温計を探しにいっている間に帰ってきたらしいサンジが私の様子を見に来てくれた。そっと近付いてきたサンジは私のおでこに乗ったタオルを退かし、そこに大きな手を乗せる。その手は大きくて冷たくて、とても心地良い。



「まだ熱は下がってねェみてェだな……なんか食いてェモンあるか?」

「ん、何でもいい」

「食欲は?」

「お腹すいた」

「いいこったな」



ニッと笑ったサンジが私のおでこにタオルを乗せて、すぐ作るから待ってろと部屋を出ていった。そして入れ違いに入ってきたゾロが体温計を渡してくれた。



「至れり尽くせり、だ」

「…あァ?」

「さっきサンジも来てくれたの」



ふふっと笑って起き上がった私を心配そうに支えてくれるゾロ。最近風邪ばっかり引いているけど、これだけ気にかけてもらってたら風邪なんてすぐにでも治りそうな気がした。


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