朝、いつもより少し早く目が覚めた。思考が鈍いままベッドから身体を起こし、スッキリさせるように身体を伸ばすと思考も澄み渡る。寝室を一周見渡すと、どうやらロビンは私よりも一足先に起きたらしく部屋にはいなかった。反対に、布団にくるまったまま動かない子が1人――むーだ。むーは朝に弱いらしく、いつもなかなか起きてこない。まぁ慌ててる訳じゃないから構わないんだけど。スヤスヤと眠るその寝顔は、年齢よりも幾らか幼く見える。そして余りに気持ち良さそうに眠るその姿に自分の口元が緩むのがわかる。
「…あ、ごめんね起こしちゃったかしら」
「ん、平気……おはようナミ」
「おはよう…でも早い時間だからまだ寝てて大丈夫よ」
私がそう言うと、返事なのかそうなのか良く分からない小さな声が聞こえて思わず笑ってしまった。どうやらもう少し眠るらしい。こうやって安心しきった姿を見せてくれる、その事が何だかとても嬉しかった。
おやすみ
あー眠い。昨日も遅くまで新兵器考えてて寝るの遅くなっちまったからなぁと思いながら布団から身体を起こした。大きく伸びをして周りを見ると、ゾロとサンジそれから珍しくルフィももういないみたいだ。布団に丸まっていたのは俺とチョッパーだけだったらしい。もう一度大きく身体を伸ばすと、朝御飯のいい匂いが花を掠めた。適当に着替えを済ませて匂いのする方へ向かうと、もう皆が椅子に座って飯を待ちわびている。俺も空いているむーの隣に座って、ゾロが呼びに行ったチョッパーを待つ。
「そういやむーんとこの世界も食ってるモンは同じなのか?」
「海獣とかそんなのは食べない、っていう存在すらしてないんだけど…似たようなものは多いかな」
「海獣とかいねェのか?」
「いないよ、こっちは見たこと無い生き物ばっかり。向こうに無い食材とか沢山あるし、毎日楽しみなんだ」
ふふ、と笑ったむーに何となく納得。俺もまだ知らない生き物とかいっぱいあるし、この世界は本当に不思議で、だから面白いんだ。一回むーの生まれた世界に行ってみたいなァなんて思いながら、料理に手を伸ばすとサンジにその手を叩かれた。
いただきます
眉毛の作った飯で腹も膨れ、ゆっくり走る船の上で筋トレを始める。こうやってのんびり何も考えずに過ごす時間も悪くねェ。1トンの重さを持ち上げ腕を上下するが、もう少し重くしてもいいかもしれない。そろそろまた少し筋肉がついてきたと実感するのは嬉しいことだ。腕に意識を集中させていると、片側から小さな気配を感じる。誰なのかと大方の予想は付いている。案の定、隣に座ると5キロの鉄アレイを手に筋トレを始めた。何を話すわけでもねェが、最近よくあるこの光景にはもう慣れた。邪魔されるわけでもねェし、筋肉を付けようとしているその努力と向上心は良いことだ。
「もう腕、パンパンだ」
「…そりゃちょっと早すぎるだろ」
「でもこれでも前よりは力付いたと思うんだけどな…ね、どう?」
「どう?って言われても、ンな細っこい腕見せられたって何とも言えねェな」
「ゾロの腕が太すぎるんだって」
俺に向けて力こぶを見せた、その腕はきっと俺が握れば力を入れなくても折れてしまいそうな程に細い。俺の腕を見ながら苦笑いを浮かべたむーはまた筋トレを再開させる。私もゾロみたいにならなくちゃ、なんて言って気合いを入れ直すと意識はそっち側。中々の集中力だとそこは認めるが、俺みたいになったむーはハッキリ言うと見たくねェ。そんなことを思いながら俺も同じ様に腕を動かした。
じゆうじかん
サンジが作ってくれるおやつを待ちながら、船から海をながめた。見渡すかぎりどこまでも青くてキラキラしてて、おれにとっては未知の世界だった、これが冒険なんだなぁと思い、知る。あの頃は外の世界なんか何も知らなかったんだ。あの頃は、仲間なんて知らなかったんだ。
「今日はのんびりしてるねぇ」
「天気もいいし、日向ぼっこ日和だ」
「ほんと。いい匂いもしてきたし」
「今日はサンジ、何作ってくれるんだろうな〜」
「何が出てきても美味しいから楽しみなんだよね。こっち来てから贅沢してるよ、私」
隣にやってきたむーは、ふふっと笑って、次に海に背を向けて空をながめた。いつの間にか一緒にいるのが当たり前になって、仲間の意味を知った。頼ったり頼られたり、こんな風に何でもない話をしたり、すごく、楽しいと思う。むーのことはまだまだ知らない事ばっかりだし、だけどむーに聞いた、桜の世界。むーのいたところは桜が綺麗だと言ってて、おれはそこに行ってみたいんだ。そんな日がくるかわからない、だけど、こんな穏やかで力強い毎日が終わるのは嫌だなぁと思った。
そらがきれいです
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