最近、よく耳にする噂。
クラスの間でもよく行き交ってるんだけど、誰も本人に確認をしようとはしない。
私も気になるけど、なんと無く聞けない。
嘘なのか本当なのか、クラスの皆も気にはなるけど聞けないでいるみたい。
「むむむさん知らないの?」
よくこうやって聞かれるけど、私は“知らない”としか言いようがない。
だって、知らない。
「ごめんね」
何で謝ってるのかも分からないけど、残念そうなクラスメイトの顔を見ると申し訳ない気持ちになる。
それと同時に胸を覆い尽くすグレーな感情。
「むー」
呼ばれた声に顔を上げると、今まさに、話題の中心の人物。
私の親友が、そこにいる。
どうしたのと尋ねれば、困ったように笑って少し私から視線を逸らす。
また、グレーな気持ち。
「言わなきゃいけないことがあるの」
この時点で気付いてた。
だけど気づかないふりで、私は彼女の言葉を待つ。
予想はしているけど。
緊張で少し、心臓が速くなる。
「私ね、」
…――悠太と付き合ってるの。
もしも
大好きな男の子と
大好きな女の子が
知らない間に
恋人同士に
なっていたら
「隠してた訳じゃなくて、言わなきゃって思ってたんだけど…」
今にも泣き出しそうな彼女に、私は精一杯笑って見せる。
平気だよって。
私は大丈夫だよって。
そう、伝わればいいと思う。
「ごめんね」
怒ってなんかない。
だから謝らないで、って。
親友が幸せならそれでいいって、そう思う気持ちはちゃんとある。
グレーな感情は消えないけど、でもその気持ちは嘘じゃない。
本当のこと。
「もっと早く言ってくれれば良かったのに!」
ほんのちょっと、強がったけど。
まだ、笑える。
幸せを、願うこともできる。
だからこれでいい。
親友の幸せを願いながら、感情が涙にならないように精一杯笑って見せる。
大好きな二人が
付き合っているという
噂の真相を知った時の
この気持ちの名前
怒ってる訳じゃない。
悲しいわけじゃない。
だけど、嬉しいわけでもない。
ただ
せつない
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