むーが来たときのことはなにも知らないけど、むーについては少しは知っているつもりでいる。



「なぁ…むーって結局、何モンなんだろうな」



今はもう寝る時間で皆が自分の寝床につく。一度は寝静まった暗い部屋で、ウソップが突然そんなことを言った。サンジとゾロは何も言わないけど寝返りをうった音が聞こえた。ルフィは大きないびきをかいてぐっすり寝ている



「むーちゃんが何モンでも別にいいンじゃねェか?」

「…あいつが宇宙人だろうと何だろうと今さら関係ねェだろ」



少しの間のあと、サンジとゾロがそんなことを言った。
冬島が近付いているんだと思う。布団をかぶってもまだ少しだけ肌寒い。



「でもよぉ、やっぱ気になんねェか?ゾロとサンジはむーのことどう思ってンだよ」

「俺か?俺ァ…いい子だと思うぜ。気は利くし可愛いし、まぁナミさんやロビンちゃん程のスタイルはねェがそれもまた愛らしい」

「アホだろ」

「あァん!?」



心なしか少し弾んだサンジの声。ナミとロビンは一般的に言えば美人っていう分類で、むーとは少し違う。そういうのはよく分からないけど、遊んでくれるしいろんな話を聞かせてくれるしおれはむーが大好きだ。
ウソップはまぁなぁとかそうだなぁとかそんなことを言いながら寝返りをうった。



「ゾロは?」

「…ンなのどーでもいいだろ」

「なんだよそんなこと言ってー!実は好きとか言っても協力してやンねぇぞ?」

「ンなわけねェだろうが!」

「クソマリモてめェ…!」

「だから違ェっつってンだろ!」



静かな部屋にゾロの怒鳴り声が響いた。サンジは何やらブツブツ言ってて、呆れたようなゾロのため息が聞こえた。



「そう言うウソップはどうなんだよ」

「俺かァ?んー…正直よくわかんねェんだけどよ。どこにでもいそうだしなァ…なんか妹とかいたらこんな感じなのかなーって」

「…わからなくもねェな」

「てめェの妹がむーちゃんなんて贅沢なこと言ってンじゃねェ!」



もう知らねェ俺は寝る、とゾロは静かに寝返りをうった。ウソップとサンジの声だけが部屋に聞こえる。おれもそろそろ頭がうとうとしてくる。



「ルフィはどう思ってんだろうな。一番なついてんのルフィだよなァ」

「そうだな。ルフィは見てわかるくらいむーちゃん好きだからな。ま、俺も負けてねェけど」

「どこ張り合ってんだよオメェは」



最後に聞こえたのはウソップの笑い声だった。やっぱりみんな同じなんだと思う。むーは愛されてるんだなぁって思うと嬉しくて、それからちょっとだけ羨ましかった。


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