「ナ〜ミすぁ〜ん!ロビンちゅわ〜ん!」
何時ものように船内に響き渡る声。おやつが出来たのだろう、ナミとロビンを追いかけ回しているのはサンジだ。もういつもの出来事。これが日常。
「…いいのかアレで」
私の隣には何キロあるのか分からない鉄アレイで筋トレをしているゾロがいる。
どういう意味かと聞かれずとも理由はわかる。好きとか付き合うとか、そんな恋愛事情からは遠ざかってきた私にもとうとう春がやってきたのだ。こっちの世界で、恋をした、相手がそのサンジなのだ。
告白されたのは数日前のこと。今でも思い出すと胸がドキドキして、照れたように煙草で口元を隠したあの仕草を思い出す。つい緩みそうになる口元を抑えると、ゾロは呆れたように大きな溜め息を吐いた。
「他の女の尻追いかけ回してる奴でいいのかよオメェは」
筋トレする手は止めず、視線を向けることもなくそう言ったゾロに私は少し苦笑い。そりゃあ少しはなんだかなぁと思う部分もあったりするけど、嫌なのかと聞かれれば別にそんなわけでもない。きっと世界中のどの女の子を見掛けても変わらないと思う。それがサンジだから、と。
ガツン、と乱暴に鉄アレイを床に置く。胡座をかいたその脚の上に膝を置き、丸くなった背中が私の横目に入った。なにも話さないけど彼は小さくため息を吐く。もしかしたら少し呆れているのかもしれない。ゾロは恋とか愛とかそういうの、全然興味なさそうだし。
「むーちゃんおやつだよ〜!……っておいクソマリモてめェそこ退きやがれ!!」
「あァ?俺じゃねェよむーが横来ただけじゃねェか」
「ンだとてめェやんのかコラァ!!!」
いつものように喧嘩になる二人。平和だなぁって場違いなことを考える。いつもと変わらない、そんな毎日に加わった恋っていう1つの小さな気持ち。何だか少し甘酸っぱいような気がして、私は喧嘩をする二人を見ながらそんなことを思う。
しあわせもうひとつ
もしもサンジと付き合ったとしたら、いつもの日常に小さな幸せがプラスされると思う
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