授業が終わって、珍しく今日は塾もない。なんか先生方に大きな任務が与えられたらしいのだ。私にしてみれば嬉しいことだけど、いつも塾に行ってる時間が空き時間になるのは何だか時間を持て余しているような気がしてしまう。今日は少し図書館に行ってみよう、と足を進める。膨大な数の本が詰め込まれている図書館に足を踏み入れるのはまだ数えるほど。ここまで大きいと、いくら学校とは言えやっぱり緊張してしまう。



「…あれ、むむむさん?」



珍しく声をかけられる。振り向いたそこには一人の男子生徒が立っていた。見たことある、彼は同じクラスで私の斜め前の席に座っている高橋くんだ、多分。特に目立つ存在でもないし、お金持ち学校であるこの学園の中では親近感を持てる数少ない人物。勝手に親近感を抱いてるだけだけど。本当は彼もお金持ちなのかもしれないけど、素朴な雰囲気がそう感じさせない。
どうして声をかけてくれたのか分からなくて曖昧な表情を浮かべていると、珍しいねと言葉をくれる。



「いつも学校終わったらすぐいなくなるからさ」

「ああ、うんちょっと、塾に行ってるから」

「塾とか行ってるの?やっぱり真面目だね、尊敬するよ」

「そんなことないよ、全然、もうついていけないし」



本棚を前にしてこんな雑談。友達が出来ない私にとって、こうやって誰かと学校のことを話したりするのはすごく貴重な時間。高橋くんと話したのは初めてだけど、物腰が柔らかくてすごく優しい人だと思った。楽しくなった私たちは結構長い時間話していたらしく、図書館にいた人はほとんどいなくなっていた。



「ご、ごめんね調子乗って話し込んじゃったけど、」

「謝らないでよ、楽しかったし」



また話せたらいいね、なんて嬉しいことを言ってくれるから私は大きくうなずいた。友達、ってこんな感じなのかな、って。そう思うと胸がドキドキした。



「よ、」



図書館を出ると何故か奥村くんが私を出迎えてくれた。偶然ここにいた、と言う事だけど奥村くんでも図書館とか来るんだなって思うとちょっと意外に感じる。
何と無く、二人で歩き出す。向かう場所は特にないけど、多分下駄箱に向かってるんだと思うけど。



「アイツ、友達?」

「アイツ?…ああ高橋くん?友達っていうか、たまたまそこで会っただけだよ」

「ふーん…」



頭の後ろで腕を組み、唇を尖らせて歩いている。何か変なこと言ったかな、って思いながら長い長い廊下を歩いた。





この
気持ちは

だろう




( うまく言葉が出てこない )



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