寒い寒い冬の日。
そんな日にもいつもと変わらず、寒い寒い階段で休み時間を過ごす俺ら。
「要っていつからむむむさんと付き合ってるの?」
寒ぃ、と吐き出した息は校舎の中にも関わらずほんのり白い。
その一瞬だけ空いた、間。
は?と、悠太の口にした言葉に返せる言葉はその一言だけ。
悠太も祐希も春も、じっと俺を見て答えを待っているようだがやっぱり意味がわからない。
再び、は?と聞き返すと、凄まじい勢いで階段を駆け上がり飛び掛かってきたのは金髪頭のサルだった。
「昨日の放課後!相合い傘しながら!しかもチチチチチ」
「キスもしてたって」
「そーだよもう世界中の噂になってんだよ!!」
「クラス中の間違いですけど」
飛び掛かってきたサルは俺のブレザーを引っ張り力一杯揺すってくる。
だがやっぱり意味がわからない。
は?としか言わない俺に今度は春の一言。
「昨日クラスの子が見たらしくて。なんか泣いてるむむむさんの涙を拭って、そのままその、キ…キスして帰っていったって…」
「んなわけあるかあああ!!!」
要っちぃぃいいい!なんて叫ぶサルの腕を振り払いながら今度は俺が叫ぶ。
さっきまでの寒いはどこへ行ったのか。
体温が上がるのが自分でもわかる。
有り得ないとかするわけねえだろなんて言っても、奴等の好奇心を刺激するだけで。
こいつらもそれが事実じゃないと解っていて、ただ面白がっているだけなんだろうがそれが余計に面倒臭ぇ。
「白昼堂々クラスメイトとチューするとはいい度胸してんじゃねえか羨ましいぞチクショオオ!!」
「本音出ちゃってますから千鶴さん」
「この口か!この口が抜け駆けファーストチッスをををを!」
「ばっかやめろサル!」
「こーら何してるの?もうすぐHRはじま……」
俺の両頬を鷲掴んだサルがどんどん顔を近づけてくる。
そんなバッドなタイミングでやってきたのは東先生で、そんな俺らをみて一瞬固まる。
「あ…あれ?むむむさんとつきあってるってきいたんだけど…………そっか」
「どっちも違います!」
盛大な勘違いをしながら笑って見せた先生にも訂正をしながら、俺らはそれぞれの教室に移動した。
色々考えてみると、全ては何も考えてなかった俺の行動のせいで。
「まぁまぁ、良かったじゃないですか誤解が解けて」
「おめぇらの誤解だろうが」
「よくよく考えれば有り得ないって分かったのにな!要っちに彼女なんて何十年後の未来の話だよって話!」
「だったらおめぇは何百年後だよサル」
ポン、と俺の肩に手を乗せたサルと祐希はそのまま自分の席へ戻っていく。
最後までめんどくせぇ奴等だ。
とりあえず後で謝りに行くか…と、冷やかされるのを覚悟しながらそんなことを思った。
雨、のち晴れ
(…あ、また、雨)
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