「あーだるっ」
隣を歩く岬ちゃんがそうやって溜め息を吐きながらスカートを下げた。
切っちゃったみたいであんまり長くはなってないんだけど、それでも普段よりは少し長めでなんだか新鮮だ。
それにお化粧もほとんどしてない状態で、だけどそれでも美人なんだから羨ましい。
周りにも大丈夫かな?とかこれ絶対アウトだよ〜なんて声がたくさん聞こえてくる。
私はいつも通りだけど、どうして今日こんな風なのかと言うと朝から服装点検があるからだ。
校門の前には青いジャージを着た生活指導の先生と、スーツ姿の東先生が立っていた。
「あ、先生おはよー」
「おはようございます」
「うん、おはよう」
「あのさ、スカートこれ以上長くならないんだけど、いいでしょ?」
「…いや、うーん……ギリギリ…」
本当に微妙なラインのスカート丈で東先生は困ったように考え込む。
一応オッケー貰ったらしいんだけど、多分生活指導の先生だったらアウトなんだろうな。
「むむむさんはオッケーだね」
「ありがとうございます」
「いつも完璧だから、見る方も安心していられるよ」
「それは私が安心出来ないってことですか?東せんせ?」
「…あはは……」
先生を困らせて楽しんでるみたいだったし、いつまでも私達と話してるわけにもいかないだろうからそろそろ退散。
校門を抜けると服装検査が終わったからなのか、早速校則をやぶり始める生徒たち。
岬ちゃんも勿論そのうちの一人だ。
「あ、校則違反」
「あんたらに言われたくない」
「俺のどこが校則違反だぁ!?見てみろよゆっきーと作り上げたこの見事な七三分けを!」
「完璧です」
岬ちゃんのスカートを指差しながら校則違反だと言う祐希くんと、黒ぶち眼鏡に七三分けっていう橘くんが歩いてきた。
橘くんの髪は天然のブロンド。
さすがにこれは校則違反ではないんだな、なんてことを思ったり。
それよりも気になるのは黒ぶち眼鏡と七三分けだ。
いいねぇ、って笑うと橘くんは「さっすがむむむさん!」って嬉しそうに笑った。
「祐希くんはブレザーなんだね。ネクタイもしてる」
「すぐ着替えますけど」
悠太くんと祐希くん、同じ格好をしていれば髪型以外に違う場所は見当たらないんじゃないかなってくらい同じ。
よくよく見ると少しずつ違うんだけど。
「あ。後で千鶴の写メ送りますよ」
「橘くん?」
「貴重な写真です」
パカッと開いた携帯に写っていたのは、黒ぶち眼鏡に七三分けっていう今の格好で木に寄りかかっている橘くん。
めちゃくちゃキメ顔で思わず笑ってしまうと、いいでしょ、と祐希くんが呟いた。
「むむむさん、おはよう」
「おはよう悠太くん」
塚原くんと松岡くんにもおはようと挨拶。
今日はなんだか朝からいい日だなってことを思いながら私たちは教室に向かった。
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