長かったようで短かった修学旅行も、あとは新幹線で帰るだけ。
お土産もいっぱい買ったし写真もいっぱい撮って、思い出っていうものは沢山できたと思う。
「帰りたくないなぁ」
隣でそう呟いた岬ちゃんに私は大きく頷いて、ゆっくりと動き出した新幹線の窓から流れる景色を眺める。
岬ちゃんは落ち着いていられない!と、直ぐに席を立ちフラフラと通路を歩いていく。
私は行ってらっしゃいとだけ呟いて、携帯を手にゆっくりとした時間を過ごす。
楽しかったなぁと思うのと同時に、やっぱりちょっと疲れたっていうそんな気持ちも生まれる。
ダラッと椅子に背中を預けていると、フラフラッとやってきた塚原くんが私の隣に座った。
「あっち騒がしいんだよ」
疲れているのかドカッと座り、項垂れるようにひじ掛けに肘を乗せた。
後ろから聞こえてきた声は確かに賑やかで、声の主は橘くんと岬ちゃんに違いない。
楽しそうだねって笑いながら言うと、塚原くんはそうだなーって棒読みで言った。
「京都、楽しかったね」
私がそう言うと、塚原くんはまた「そうだな」って答えた。
疲れているのかもしれないし、やたらに話し掛けるのもどうなんだろって私はそれから黙り混む。
塚原くんとの沈黙は、沈黙が苦手な私にも全然平気で、それどころか不思議と心地よささえ感じてしまう。
塚原くんの雰囲気がそう思わせてくれるのかもしれない。
「塚原くんってあんまり、はしゃぐイメージないよね」
「あ?…まぁ、はしゃいでたわけじゃねぇし」
「え、勿体無い。せっかく京都行ったのに」
「そういうむむむはどうなんだよ。俺もお前がそんなはしゃいでるイメージねぇぞ」
「私結構はしゃいでたけどなぁ。お寺とか」
「寺ではしゃぐなよ」
呆れたような声で私にそうツッコんだ塚原くんは、身体を伸ばして座り直した。
そうだよねぇお寺ではしゃいじゃいけないよね、って思って笑ってると「めでたい奴だな」って言われた。
「そういえば塚原くんたち、自由行動のときどこ行ってたの?」
「…嵐山」
「そういえば祐希くん言ってた気がする。楽しかった?」
「まぁ、そりゃ楽しいわな。あいつらがずっと騒いでたから疲れたっちゃ疲れたけど」
「はは、想像つくなぁ。私も行けばよかったかも、嵐山」
そんな話をしながら私たちなりに盛り上がっていると、うおーい!と橘くんが駆け寄ってくる。
来るときもこんなことあったなぁって思っていると、やっぱり彼は私たちにカメラを向ける。
せっかくなんだから撮ってもらおうよって塚原くんに寄り添うと、諦めたようにカメラに視線を向けた。
「…ゆうたんの時とは全っ然違う反応」
「はぁ?」
「た、橘くん…」
無意識の発言だったのか、ハッと口元を押さえて「写真写真!」とシャッターを押した。
悠太?と問いかけてきた塚原くんには曖昧な感じで返して、岬ちゃんが帰ってきて入れ替わりで塚原くんが戻っていった。
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