ぽかぽかに晴れた、だけどまだちょっと肌寒い昼休み。
お昼ご飯を食べてゆっくりしてたところ、職員室に呼び出されてさっきまで行ってたところ。
出したはずのプリントが私の分だけ無くなっちゃったとか。
直接出したから先生が謝ってくれただけなんだけど、呼び出されるのって何だか不安になるし緊張もする。
何もしてないから怖がることなんてないんだけど。
せっかくだからジュース買っていこうって自動販売機まで歩く。
ジュースを買って、さぁ戻ろうって体育館の前を通り過ぎようとしたとき。
「…橘くん?」
「ん?……あぁなんだむむむさんじゃんっ!」
体育館の前のコンクリートによりかかるようにして何かを食べてる橘くん。
にっこり笑って元気に挨拶してくれる。
「何してるの?」
「何してるのか…うーん」
考えながらあんぱんを食べる。
何もしてないんだろうなってのがすぐに分かった。
むせる橘くんに、さっき買ったジュースを差し出せばキラキラした表情でまた笑う。
表情豊かだなぁ。
橘くんは自分の横をぽんぽんと叩いてそこに座るように促されて、コンクリートに寄り掛かるように座った。
「お昼ご飯?」
「んや、さっきここで東先生に貰った」
ぽかぽか、陽当たりもよくて暖かい。
なんか眠くなりそうだなぁって思いながら、真っ青に広がる空を見上げる。
「平和だねぇ」
「ほんとだよなー」
ぴこぴこ携帯を触り、何かを見付けたのか画面をズイッと私に向ける。
そこに映ってたのは猫で、祐希くんと悠太くんに似てない?って質問をぶつけられる。
言われてみれば似てるような…?
「そういやさっきさ、ここで高橋さんに会ったんだけど俺初めて喋ってさ!」
高橋さん。
ゆうたんの元カノで、とかあんまりにも嬉しそうに喋るから私も笑いながら聞いた。
忘れかけてた事、例えソレが過去のことだとしてもやっぱりそれは、本当にあったことだったんだなぁって淋しくなる。
きっと別れた今でも、妬いてるんだ高橋さんに。
「むむむさーん聞いてる?」
「…あ、うん聞いてるよ?」
「ふーん…」
じっと私を見る橘くんに戸惑う。
そんなに見られてもなぁ…って、恥ずかしいしちょっと気まずい。
何か話そうって、内容が頭をぐるぐるめぐる。
「むむむさんってさ、ゆうたんのこと好きなの?」
「………え、」
「え!うそまじで!?」
「や、あの……」
一段と輝きを増した橘くんに、なんて言ったら良いのかわからなくて変に焦る。
なんだそっかぁ、って、橘くんにはもうバレバレみたい。
赤くなった顔を隠すみたいに、抱えた膝に顔を埋めた。
「いつから好きなの?」
「…わかんない」
「え、そんなに前から!?」
興味津々らしい。
前のめりになって質問してくるからちょっと引いちゃってるけど、橘くんはやけに楽しそうに話してる。
「告白とかしないの?」
「し、しないよ告白なんて!」
「えー?なんですればいいじゃん、ゆうたんと仲良しじゃん」
「全然仲良しなんかじゃないよ、ほんともう……話すだけでいっぱいいっぱい、です…」
ああもう何て話をしてるんだろう、恥ずかしすぎる。
…しかもよくよく考えてみれば、考えなくてもだけど、橘くんって悠太くんたちと仲良しなわけで。
「片想いかぁ……俺と一緒だな」
「…え?」
「……片想い、ってやつ」
橘くんも、私と同じように膝に顔を埋めてそう言った。
ゆっくりとした時間が流れる。
橘くんの恋は知らなかったけど、そっかぁ恋してたんだ、なんて思って不思議な気持ちになった。
片想いは、切ないんだ。
「あ、そだオレ協力するよ!ゆうたんとの間取り持ってやるって!」
「え…や……いいよそんな…」
「そう言わずにさっ!そうだな、じゃあまずオレとむむむさんのメルアド交換!はい、せっきがーいせーん」
橘くんとアドレス交換。
色んな情報送ってやるよ!なんて、何故か橘くんはわくわくした様子ですぐに一枚の写メを送ってくれた。
サンタクロース姿の悠太くんと祐希くんと塚原くん。
橘くんはニッと笑ってピース。
「…あ、ゆっきーからだ…………んな!!!?」
突然の大きな声にビクッと肩が跳ねる。
携帯を睨み付けながらわなわなと震え、いきなり立ち上がった。
何故だか掴まれた右手を引っ張られながら、屋上に向けて階段を駆け抜けた。
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