朝、何故か橘くんに写真を撮られた。
近くにいた塚原くんを橘くんが無理矢理連れてきて一緒に撮ったり、岬ちゃんと一緒にとか、わけがわからないまま5枚くらい撮られた。
だけどそんなことも忘れ、早い時間から卒業式は始まる。
仲のいい先輩はそんなに居なかったけど、良くしてくれてた先輩はたくさんいた。
自分が卒業するわけでもないのに、いつもと違う雰囲気にどこか悲しさを感じる。
「みんな泣いてたね」
「そうだねー」
卒業式が終わる。
先輩たちの中には泣いてる人が沢山いて、クラスの子たちも何人か泣いてる子がいた。
来年はいよいよ自分の番なんだなぁって思うと、それだけでちょっと切なくなる。
まだ先だけど、もう、少し。
教室に戻って先生の話を聞く。
なんだかいつもよりも静かな気がして、また切なさが増す。
「あ、みんなでてきた」
窓から外を眺める。
三年生も二年生も一年生もいて、最後のお別れをしていた。
泣いてる子もいる。
写真を撮ってる子もいる。
「あれ浅羽たちじゃん」
「ほんとだ」
「相変わらず人気だねぇ」
先輩たちに写真やボタンをせがまれているらしい浅羽兄弟が見えた。
塚原くんや松岡くんも先輩たちと楽しそうにしてる。
教室は静かで、不思議な気持ちになった。
悲しいとか切ないとか、そんな感情が私の胸をきゅっと締め付ける。
「あと一年かぁ…」
あと、一年。
三年生になるまでまだもう少しあるけど、入学してからもうそんなに経ったんだって思うとなんだか感慨深い。
高校三年生ってなれば、就職とか進学とか色々考えなきゃいけない年で。
まだ早いかもしれないけど、漠然とした不安に襲われた。
「あ」
「2人してさぼりですか」
祐希くんと悠太くん。
特に祐希くんの方はぐったりした様子で窓際の私の席にダラッと座り、悠太くんも疲れた様子で前の席に座った。
「そうだ」
何かを思い出したかのようにブレザーのポケットを探り出す悠太くんと、机に顎を乗せた無理な体勢でそれを見る祐希くん。
改めてやっぱりソックリ。
差し出してくれたそれは写真だった。
「なにこれ」
「…朝のやつだ」
塚原くんと映ってるのが2枚と、岬ちゃんとのが2枚、それから最初に不意討ちで撮られた一枚。
恥ずかしくて不意討ちの写真を隠すと、岬ちゃんはそれを取り上げて楽しそうに笑った。(よかった変な顔してなくて…)
「あいつほんっと暇人だよねぇ」
ゲラゲラ笑いながらそれを眺める。
岬ちゃんとのは一枚ずつわけて、塚原くんのは一枚だけもらってもう一枚は塚原くんに。(いらないかも知れないけど)
「要に渡したらこれでナニするかわかんないよ」
「塚原どんなキャラなのよ」
「むっつりですから」
「あんたらあほすぎるわ」
楽しそうに笑う岬ちゃんや、何でもない話をする2人に混じってると不安なんか忘れてた。
もう少し、こんな風にくだらないことしてたいなって、そう思った。
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