窓の外は雨。
今日は先生に頼まれた仕事を手伝ってて、帰りはちょっと遅め。
ザーザー降る雨。
下駄箱の横のかさ箱には、私が朝持ってきたはずの傘は残っていなくて、ビニール傘が数本残ってるだけだった。
…どうしよう。
このままじゃ帰れない。
学校の傘を借りていくしかないかなぁ、と小さくため息をついて室内に向けてUターン。
「何やってんだ」
「…あれ、塚原くん今帰り?」
「むむむもだろ、いつもとっくに帰ってんのに」
先生の手伝いしてた事と、傘を借りにいこうとしてたことを伝えると塚原くんはため息。
人の傘持ってくとかアホばっかだな、って呟いた。
「方向一緒だっけか、確か」
「…?」
「一緒に入ってくか?」
「……え!?い、いいよいいよ、塚原くんに悪いよ、狭くなっちゃうし、」
「いいよ別に。それに学校の傘って金取られんだろ、勿体ねーよ」
半ば強制気味だったけど、塚原くんが傘に入れてくれることになった。
相合傘だけど塚原くんってこういうの気にしないのかな…って、ちょっとドキドキしながら並んで校舎を出た。
私の左側に塚原くんがいて、濡れてねぇ?なんて気を遣ってくれたり。
ボタボタと傘に当たる雨の音に視線を上げると、左目に違和感。
チクチクした痛みに目を擦ってると、塚原くんが気付いてくれて擦ってる私の腕を掴んでそれを止めさせた。
「むやみに擦ると傷付くぞ」
「うん…」
「痛いのか?」
「痛いっていうか、チクチクするっていうか…」
私の顔を上げさせて、塚原くんが私の目を覗き込む。
ちっ…近いんだけど…!なんて緊張してるのは私だけなのかな。
「睫毛入ってる」
と、私の目を親指で拭う。
ドキドキ、よりもバクバクしてる私の心臓。
私の顔の赤さに気付いたのか、塚原くんも顔を真っ赤にしてバッと私から手を離した。
「わっ…悪ぃそんなつもりじゃ……!」
「…だ、大丈夫わかってるから、……ありがと、」
「いやほんと…悪い……」
変な空気になって、そのままゆっくりと歩く。
ボタボタ、傘に落ちる雨の音はどんどん大きくなっていく。
「それにしてもよく降るな」
「うん…誰か泣いてるのかな」
「…涙雨ってやつか」
空気を変えようとしてくれたのか、塚原くんから話してくれる。
まだちょっと顔は赤いけど。
鈍感だけど、純粋なんだろうなって。
私も岬ちゃんによく言われるから人のこと言えないかもしれないけど。
「早く晴れると良いね」
「夜には上がるらしいけどな」
「そっか」
塚原くんを見ると恥ずかしそうに目を逸らして、それにもちょっと笑ってしまう。
ふと向けた視線の先では塚原くんの左肩が濡れて、コートの色が濃くなってるのが見えた。
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