今日は職場体験の日。
一度学校に集まり、今はみんなでひだまり幼稚園。
外はまだ寒く、セーターにブレザーにマフラーっていう防寒対策もばっちり。
男の子に不法侵入だとか何だとかで追い掛け回されたりもしたけど、相手が子供だから元気だなぁって笑っていられた。(さすがに傘を振り回すのは危ないけど…)
「はーいみんな、穂稀高校のお兄ちゃんとお姉ちゃんたちが今日一日みんなの先生になってくれます。みんな仲良く遊びましょうねーっ」
まさかの7人全員で一つのクラスを担当だったけど、それはそれで心強い。
ちゅーりっぷ組のみんなは元気に挨拶してくれる。
橘くん以外の4人はここの幼稚園出身で、しかも担当のかおり先生に教えてもらってたんだとか。
ブレザーを脱いでセーターになり、その上に持参したエプロン。
もう準備はばっちり。
自己紹介をしてからかおり先生は少しだけ部屋を空けるからよろしくね、と出ていった。
その瞬間、子供たちは勢い良く飛び掛かってくる。
「ねーちゃんパンツ見えた!」
「えっ!?」
「ちょ、引っ張んな!」
「ぱんつぱんつー!」
ぐいぐいスカートやエプロンを引っ張られ、ぱんつが見えたと騒ぎだす子供たち。
実際パンツじゃなくて別に見えてもいい下着なんだけど、そんなに大声で叫ばれるとさすがにちょっと恥ずかしい。
ジャージ持って来れば良かったね、と苦笑いを浮かべて言う岬ちゃんに私も頷いた。
それからかおり先生が戻ってきてくれて何とかその場は収まり、男の子と女の子に手を引かれて今はお絵描きの真っ最中。
「ねーちゃん下手くそだな…」
「ほんと、下手ねぇ…」
「…2人は上手だね」
しみじみ、言われても…地味に傷付く。
確かにあんまり絵は上手くないんだけど、そんな哀れな顔をされるなら笑ってくれた方がいいな…。
それでも和やかに進む時間。
岬ちゃんは別の子達と積み木や折り紙で遊んでて、祐希くんや塚原くんはおままごと中。
「ねーちゃん絵ばっかかいてねーでおりがみであそぼーぜ!」
「おねーちゃん今わたしたちとおえかきしてるの!」
「しらねーよそんなの!」
「ねーちゃんはおれらとあそびたいんだよ!」
「…え、あのちょっと喧嘩はだめだよ…」
「ねーちゃんだっておえかきなんてしたくないんだろ!」
「そんなことないもんっ…おねーちゃんたのしいでしょ…?」
……ど、どうしたらいいの…。
女の子は泣きそうになりながら私の服の袖を握りしめる。
なんかもう一緒にいた男の子も泣きそうだし……私もちょっと泣きそうになってきた…。
困り果てていた私の傍で、別の遊びを誘ってくれた男の子の頭に大きな手が乗せられる。
見上げるとそこには悠太くんがいて、冷静な言葉をくれる。
「取り合わないでくださいよ」
「なんだよおまえ!」
「お姉ちゃんは一人しか居ませんから。お兄ちゃんなら余ってます」
「……」
不満そうな男の子。
空いていた私の横に椅子を持ってきて、悠太くんがそこに座った。
「…お、おやつのときはおれがねーちゃんのとなりに座るんだからな!」
「あ、はっ…そうだね、じゃあそうさせてもらおうかな」
ああなるほど、って。
この子は私と遊びたかったのかなぁって。
そう思うとなんだか凄く可愛くて笑ってしまって、男の子に「わ、わらうなブス!」って言われてまたちょっとだけ傷付いた。
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