お化け屋敷は、正直なところちょっとだけ疲れた。
色んな所に身体をぶつけたから腕とか脚とかも、ほんのちょっとだけ痛いような気もする。



「むーかわいい!」



それから今は、私のクラスの喫茶店の準備のために着替えたところ。
かわいい!って言ってくれたけど、岬ちゃんの方がずっと綺麗で似合ってる。
ちなみに私はピノキオで、岬ちゃんはピーターパン。(タイツ生地じゃなくてそこは可愛くアレンジされてるよ!)
前の店番の子と交代すると、そこにはもう似合い過ぎててびっくりするような悠太くんと松岡くんがいた。
心なしか周りもキラキラして見えるような気がする。
2人が入ってからお客さんだってちょっと増えたような…。



「チーズケーキとショートケーキと、オレンジジュースふたつお願い」

「えっと、…はいどうぞっ」

「フルーツポンチ追加!」

「はーいっ」



私は接客じゃなくて品出しの係だから楽といえば楽なんだけど、大変といえば大変。
だけど地味で友達も少ないようなの私が接客に回るのもなんか申し訳ないし、たぶん、できないし。
だから接客に回るのは悠太くんとか松岡くんとか岬ちゃんみたいな綺麗な子たちと、社交性がある明るい子たちが担当してる。
おかげで、交代してからずっと休みなくお客さんが来てくれてる。



「写真撮っていいですか!」

「えーずるいよー!」

「私も私もっ」



こんな声もずっと聞こえてきてる。
やっぱり一番人気は悠太くんの白雪姫で、松岡くんと岬ちゃんはそれに次ぐような感じ。
ずっと写真撮られてるし話し掛けられてる。
私も後で写真撮らせてもらおうって思いながら、ケーキやフルーツをお皿に乗せていった。



「むー、ちょっと休憩していいよって。はいコレ」

「林檎?」

「安いし多いから林檎なら食べ放題なんだって。浅羽にも渡しておいでよ」

「…えっ…わ、私……?」

「しかいないでしょ、ほら」



そう言って押し付けられたのは、紙コップに盛られた3、4個の林檎たち。(ちゃんと切ってあるよ)
私の分と浅羽くんの分で、少し横を向けば松岡くんは他の子に貰ってるのが見えた。
ぐいぐい背中を押されて、少し離れた場所にいる浅羽くんのところまで歩いた。
見付けた、と思えばそこには悠太くんと祐希くんが一緒に居る。
何か話してる様子で、どうしようかと話し掛けるのを少し躊躇っていると、気付いてくれたみたいで悠太くんと目が合った。



「ちょっと休憩だって」

「休憩?…ああうんわかった」

「それでこれ、皆食べてるみたいだから悠太くんも良かったら」

「…?」

「林檎だよ」

「……りんご」



じっと私を見るのは祐希くんで、悠太くんも同じように私を見る。
何か変な事言ったかな…?
あんまり見られるからちょっと恥ずかしくて、でも気になって。



「しらゆたひめ。どうする?」

「ああ…訪問販売は基本門前払いですけど…」

「ほ…訪問販売?」

「むむむさんなら安心だからいただきます」

「どうするの毒入りだったら」



しらゆたひめとか訪問販売とか毒入りとか。
訪問販売の意味はよくわからなかったけど、しらゆたひめとか毒りんごで何となくわかった。



「大丈夫だよ、ちゃんと私も食べるから」

「それなら安心です」

「良かったね悠太。安心サポート付きとはさすがです」



ぽんっと祐希くんの手が肩に乗った。
やっぱり半分くらい意味わかんなかったけど、無事に役目を終えて岬ちゃんのところに戻った。(そういえば祐希くんまだ鬼太郎の格好のままだったな…)


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -