いよいよ文化祭当日。
早い時間にもかかわらず一般のお客さんも入り、いつもと違って朝から賑やかな雰囲気。
「さっ、どこ行く?」
「いっぱいあるからなぁ」
「とりあえず回ってこよっか」
たこ焼きにカステラにホットドッグに焼き鳥まで、まるでお祭りのような店の並びに、歩くだけでわくわくしてくる。
駄菓子を買ったり輪ゴムの射的をやってみたり、意外と楽しかったりする。
とりあえず買ったフランクフルトを食べながら校舎内をうろうろ。(おいしいなぁ)
いろんな展示がいっぱいあって、全然興味とかなくても意外と面白い。
華道部のお花だったり、美術部の作品だったり、生物部の研究の成果だったり、宇宙の神秘についてだったり。
私も岬ちゃんも宇宙の掲示物にさり気なく興味をそそられる。
すごいね、なんて言いながら見ていくと、無重力体験コーナーっていう部屋を見付けた。
「これ被ったまま、中歩いてくださいねー」
段ボールを渡されて、それを頭にかぶったまま部屋に入る。
「うっ、わ何これ、」
「ふわふわする!」
「危ない危ない」
あはははって笑いながら、ふらふらしたまま前にいる岬ちゃんにあわせて動く。
だけどどこ歩いてるのか、どこに歩いてるのかもわかんなくて不思議な感覚のまま、ただフラフラ。
すると後ろから賑やかな声が近づいてくる。(段ボール被ってるからあんまりわかんないけど)
どん、とぶつかって、下に敷いたスポンジに足を取られて思わず倒れかかる。
「ご、っめんなさい、!」
「いやこちらこそ…」
「ったく、だからお前らはしゃぎ過ぎだって言っただろーが!」
段ボールが外れて、みんなが床のうえに倒れこんでいた。
だいじょーぶですかーって差し出された手に甘えて立ち上がらせてもらうけど、床の不安定さにまだフラフラ。
ありがとうございます、と顔を見ればやっぱり、どっかで聞いたことある声だと思ったんだ。
「あれ、むむむさん」
「やっぱりアンタたちか」
「ゴメンナサイ」
手を差し出してくれたのは悠太くんで、声をかけてくれたのは祐希くんだった。(手、握っちゃった…って心臓バクバク!)
外に出ると余りに騒がしかったのか、東先生が心配そうに大丈夫?と声をかけてくれた。
そこにいたのはやっぱり、いつもの一緒にいる5人。
ごめんなさい…!と謝ってくれる松岡くん、悪かった!と反省の色なしの橘くん、ごめんねーと浅羽兄弟、ったくお前らはほんっとに…と塚原くんの個性丸出しの5人組。
「お詫びに…」
「一個ずつしかないけど」
「あ…ありがとう」
悠太くんが差し出してくれたのは、オレンジ色とピンク色の飴だった。
選んでいーよって、だからオレンジ色の飴を選んで、受け取った。
うわぁ悠太くんから貰っちゃった、って、ドキドキする心臓。
貰った飴を、思わずぎゅっと握り締めた。
「お前ら反省してねーだろ。あ…むむむ、手、」
「手?…あ、」
「擦り剥いてる…」
「大丈夫だよこれくらい、ね」
「こんなの怪我のうちに入んない入んない」
岬ちゃんの一言に安心したのか、そっかなら大丈夫だね、と。
祐希くんはもいっこ飴あげるよ、と。
「ったくお前らは…誰のせいだと思ってんだ!もっと反省しろバカヤロー!!」
塚原くんの叫び声が響き渡る教室で、いろんな人の視線を浴びながらちょっと恥ずかしいなぁと思った。
だけど凄く、幸せな気がした。
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