コピーを終えて教室に戻ると、なんだか賑やかな事になっていた。
シンデレラや人魚姫、童話に出てくるキャラクターの衣装を着こんだ、男子生徒がはしゃぎ回っていた。
うちのクラスは男子が女子、女子が男子の衣装でお客さんをもてなす喫茶店をやる。
だからこその光景。



「むむむさんあいてるー?」

「あ、うんあいてるよー」

「よかった、これまたコピーお願いしたいんだけど…メニュー、とりあえず10枚くらい」



渡された原本とを受け取って、再び職員室に向かう。
どのクラスも忙しそうだ。

するとまた、慌ただしい塚原くんの姿が目に入ってきた。
さっきから動き回っている姿しか見ていないような気がする。
…頼られてるんだなぁ塚原くん。



「むむむさんありがとー」

「ううん、大丈夫」

「お疲れ様!と、言いたいとこなんだけどむむむさん最後のお願いー!これ職員室出してきてほしい!」

「うちのクラスだけまだ出してないみたいなんだ、ごめんね!」



文化祭の冊子に載せる紹介文。
これは生徒会の担当の先生に出せばいいはずだよね…と、また教室を出る。
なんとなく目を向けた場所には浅羽くんと橘くんがいた。
2人共店員さんだから衣装を合わせているらしい。
そういえばみんなが何の衣装を着るとかそんなの全然知らない。
…きっと浅羽くん、すごく綺麗になるんだろうなぁ。

廊下はすごく賑やかなのに、少し離れた階段を歩くと驚くほど静かだった。
遠くから聞こえる賑やかな声がなんだか不思議な気分にさせた。



「…塚原くん?」

「……あーむむむ?…何してんの」

「塚原くんこそ」

「俺は休憩」

「ずっと忙しそうだもんね」



階段に座り込んでいた塚原くんの隣に、ほんのちょっとの隙間をあけて私はなんとなく立ち尽くす。
特に話すこととかないけど、なんかこの前から塚原くんには変な親近感が沸いてきている。
…塚原くんがどう思ってるかは知らない、けど。
相当疲れているらしい。
普段見ている塚原くんとは全然違って、疲れ切った様子で膝に置いた腕に顔を埋めていた。



「なんか落ちたよ」

「あ?なんだ、こ…れ…」



一瞬で青ざめる塚原くんの顔。
やっべ!!と、慌てた様子でどこかに向かって走って行った。
ぽつんと残された私もゆっくりと職員室に向かって歩いた。
職員室も賑やかだった。
生徒会の先生に紙を渡すと、今日はよく来るね、と言われた。(ほんとだこの短時間でもう三回目だ)



「むむむさん」



呼ばれて振り返ると、恐らく私を呼んだらしい祐希くんがまたコピー機の前に立っていた。
こいこい、と手で呼ばれて祐希くんのとこに行くとどうやらまた悩んでいるらしい。



「拡大とかできる?」

「たぶん、」

「コピーもまともにできないのに拡大なんて大技要求されて困ってたんだよね」



拡大、拡大…あ、たぶんこれだ、とボタンを押していくと、一応ちゃんと出来たらしい。(よかった、あんまり自信なかったんだ)
おぉ、と言いながら隣で小さく拍手をしてくれていた。



「むむむさん、ついでにこれコピーお願いできるかしら」

「あ、はい」

「…なんか要みたいだね」

「……塚原くん?」

「がんばって」



ぽんぽん、と二度叩かれる肩。
先生が持ってきてくれた原本は一枚ではなく、冊子用をほとんどだった。
しばらく終わらないなぁ、そう思いながらひたすらコピー機に向かった。


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