もうすぐ文化祭の季節。
一応クラスでは書記っていうポジションにいる私は、生徒会会議にも参加する。
委員会に入るのが嫌だったから書記になったんだけど、意外と楽だからなってよかったなぁって思ってたりもする。(メモするだけだからね)



「塚原先輩、生徒会会議終わったのに帰らないんですか」

「あ?帰れねんだよ。文化祭費用、うちのクラスはどうやって割り振ってくか決めて担任に報告しねぇと」



大変だなぁなんて。
クラスが違うから他人事なんだけど…先輩からまた何か押しつけられているらしい。
可哀想っていうか大変そうだなぁ、って見ていると近くにいた塚原くんと目が合って。



「…手伝おっか?」

「あー……うん、」



悪い、と一言。
とりあえず「去年の文化祭の資料に目を通してまとめといてくれ」との事で、言われた通りにそうする。
隣に並んで黙々と作業。
ああそう言えば去年こんなことやってたなぁって思い出しながらの作業。



「あのヒマ人共にわけてやりてぇ」

「悠太くんたち?」

「そ。今ごろ何してんだか」



塚原くんが小さくため息をついてペンを置き、面倒臭ぇなんて言いながら大きく伸びをした。
塚原くんとこんなふうに話すの初めてだ。
なんとなく、真面目なイメージがあって近寄りがたい感じに思ってたんだけと…どうやらただの思い込みだったらしい。
グチグチと出てくる文句に、当たり前だけど一人の人間なんだなぁって親近感。



「頼られてるんだね」

「あ?頼られてるっつーか、いいように使われてるだけだろ」

「そんな事ないよ、頼りになるもん塚原くん」

「…んなこと言うのむむむくらいだよ」



まとめ終わった資料を塚原くんに渡すと、さんきゅ、と小さく呟いた。
外はもう薄暗い。



「悪い、送ってく」

「あ…ありがとう」



並んで歩く。
けどやっぱりなんとなく、あんまり話すこともない。
ポツポツとある会話でわかるのは、塚原くんが私の思ってたような人じゃなかったってこと。
頭もいいし真面目なんだけど、中身はちゃんと高校生。



「塚原くん、頑張ってね」

「手伝ってくれる気無し、か」

「や、言ってくれればいつでも、私でよかったら全然手伝うよ。クラス違うけど」

「言ったな、聞いたぞ俺は」

「廊下とかちょろちょろしてるとこでも捕まえてくれれば」



冗談ぽく言ってみた言葉に「じゃあ遠慮なく」と小さく笑ってみせた塚原くんは、意外と話しやすいんだって思った。


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