「つきあってくださいっっ」



そんな声が突然響いたのは、暑い暑い夏の日の校舎裏だった。
私は溜りに溜まったゴミ箱のゴミを捨てるべく、校舎裏にある焼却炉に向かっていた。
通りかかったのは、たまたまだった。
たまたま、浅羽悠太くんが告白されている瞬間に出くわしたんだ。
どうしよう、と思って取り敢えず隠れたはいいけど出るに出られなくて、結局最後までその場にいることになった。
だから告白の結果も知ってる。

2人の付き合いはじめを、私は知っている。



「あ、ごめん、ごめんねむむむさん、」

「ううん平気、大丈夫だよ。高橋さんこそ大丈夫?」

「私も平気、あ…じゃあね!」



時計を気にして出ていく。
これから彼、…悠太くんと待ち合わせなんだろうか。
用事を終えて何気なく向けた窓から見えた校門には、ちゃんと2人の姿があった。
気付けば握り締められていた拳をゆっくりと解いた。



「付き合ってんだってね」



どこからか現れた彼女が、私の隣でその光景を眺めてそう言った。



「うん」



そうとしか言えない私の頭を、岬ちゃんはそっと撫でてくれる。

自分にはあり得ない、なんてそんなことわかっていたはずなのに。
高橋さんが悠太を好きなことなんて知らなかったし、悠太くんもそうだったなんてことは、もっと知らなかった。



「青春だねー」



彼女の声が、誰もいない空間に気持ちいいくらいに響く。
ただ、羨ましいと思った。
悠太くんとああやって並んで歩ける高橋さんが、悔しい程に、羨ましかった。


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