部活のない放課後は、いつも何をすればいいのか迷ってしまう。毎日部活ばっかりだから他にやる事がわからない。多分みんなもそれは同じで、部活がなくても部室で過ごしたりするのももう結構普通の事だったりする。


「もう帰んのか?」

「うん部活ないし。宍戸は?」

「どうすっかな、わかんね」

「部活ないとさ、なんかどうしていいかわかんないよね」


並んでダラダラ歩きながら繰り広げられる、どーでもいい会話。喋りながら歩いてるから目的地なんかないはずなんだけど、気付けば見慣れた景色、テニス部の部室前にいた。
あー、と声を出して鞄をかけた方の腕で頭を掻き、目が合うと困ったように顔を歪ませた。やっぱり宍戸も無意識だったらしい。


「わ、みんないる」

「おーやっと来たかー」

「先輩遅いですよー!」


中に入るとやっぱりいつもみたいに皆がいた。ソファーに寝転がってゲームをするガッ君、そこにのしかかるように寝るジローくんと、横からそれを見てる忍足くん。日吉と跡部と鳳くんはお茶とか飲みながら談笑中。樺地くんはそこに座って話を聞いてるみたい。
こう見ると跡部って、意外と後輩に慕われてるんだなって事がよくわかる。
宍戸はガッ君に呼ばれて一緒にゲームを始める。ジローくんはもうソファーから落とされてるけど、それでも起きないんだから凄い。


「おせぇよ」

「…え、なんかごめん、」

「早くコーヒー入れろ」


跡部に言われてコーヒーをいれる。机に置かれてたカップに残る跡を見ると、きっと日吉か鳳くんが入れたんだと思う。跡部が自分でやるとは思えないしね。
三人分のコーヒーを入れて、ゲームしてるみんなの分もついでにジュースを準備。あ、そうだ冷蔵庫にケーキが入ってる、ってそれを思い出して机に置いた。
私は跡部の隣、日吉の前に座ってチョコレートケーキを食べる。


「これ跡部が持ってきてくれたんだよねぇ。美味しいはずだ」

「ハッ、当然だろ」

「いいなぁ」


普通のケーキでも美味しいんだけど、跡部が持ってきてくれるケーキは格段に美味しい。超高いんだろうけどね。
ぱくぱく食べる私を見たのか、跡部の前に置いてあったレアチーズケーキを私にくれた。いいの?って聞いたら食い飽きてんだよって、羨ましいなぁほんとに!
いつの間にか隣に来てた忍足くんが私の食べかけのチョコレートケーキを食べ始めてた。レアチーズケーキあるからいいけど。


「部活ないっちゅうんに何してんねや俺らは」

「仲良しだよね!」

「仲良しってなんか…良い響きですね!」

「テメェらうるせぇよ」


はしゃぐ私と鳳くん、呆れる跡部と日吉、ケーキを食べ続ける忍足くん。隣からはゲームしながらぎゃあぎゃあ騒ぐガッ君と宍戸の声、それからジローくんの寝言。
何でもないこんな時間が大好きで、すごく大切。特別なことはいらない、だからずっと一緒にいられたらいいなって、そう思った。


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