やっと午前の授業が終わる。お昼ご飯は、数少ない友達と教室や食堂で食べたり、テニス部の皆で屋上で食べたり、教室で跡部と食べたり色々。跡部は意外とパンとかだったりしてなんか本当にお金持ち?って思うこともしばしば。
「あ」
「なんだよ」
「お弁当わすれた」
「……アホかお前は」
鞄を探ってもお弁当はない。そういえば朝、鞄に入れた記憶もない。食堂にしようか購買にしようか…どっちがいいか跡部に聞くと「どっちでもいい」って返ってきた。確かに跡部にとってはどっちでもいいのかもしれない。私もどっちでもいいんだもん。
悩んでる私に跡部が食堂っていう結論を与えてくれる。優柔不断な私には、跡部みたいに決めてくれる人は凄く助かる存在。
「何にしようかなぁ…跡部は決めた?」
「いや、まだ」
氷帝の食堂はメニューが豊富でいっつも迷う。しかも内容の割に値段が安い。今日の日替わりはオムライスで、だけどハヤシライスも食べたいし…あぁ迷う。どうしよう。
じっと悩んでたら跡部がどっちも注文。何だろうって見てるとどっちも食えばいいだろって。…あ、しかも跡部の奢りだ。
「日吉と鳳くんがいる」
「あン?…珍しいな」
「一緒に食べようよ!」
跡部がハヤシライスの定食、私がオムライスの定食を持って二人のところに行く。何故か並んで座ってる二人の前に私と跡部も座る。普通は向かい合って座ると思うんだけど、並んでご飯を食べてる2人が凄く可愛く見えた。
「一緒に食べていい?」
「あ、はい!」
鳳くんが笑顔で反応してくれる。日吉は無表情で小さく頷いた。2人は見た目にピッタリな物を食べている。日吉は和定食、鳳くんはカルボナーラに野菜サラダ。
「今度はカルボナーラにしようかなぁ」
「食いモンの事しか考えてねぇのかテメェは」
「人が食べてるの見ると美味しそうに見えてくるんだもん」
「あ、わかりますそれ」
あはははって爽やかに笑ってくれる鳳くんも、実は日吉の食べている和食が気になっていたらしい。今度一緒に食べようねって言ったら、またさっきみたいなキラキラした笑顔を向けてくれた。
そんな話ばっかりしてるから目の前のオムライスは全然減らない。跡部はパクパク食べてくから食べおわる前に一口もらう。(ハヤシライスにすればよかったかな…)
「…何回も見てるはずなんですけど、跡部さんが食堂で食べてる姿に違和感を感じます」
「アーン?」
「実は私もずっと思ってたんだけど、なんか面白いよね!」
「……てめぇ、ンなこと思ってたのか」
「庶民派跡部だ」
「うるせぇ」
「…あ、ひどい!」
機嫌を損ねたのか跡部は私のオムライスに、自分のハヤシライスを食べ終えたスプーンをグサッと刺した。頬杖をつきながら「早く食え」って、言うけど後輩との触れ合いも大事だよね!
「跡部さんとむーさんって仲いいよなぁ。羨ましいくらい」
「何が羨ましいんだ」
鳳くんと日吉がそんな会話をしていることも知らないまま、私と跡部はしばらくそんな子供っぽいやりとりを繰り広げていた。
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