島に着いた。
ナミの言っていた通りこの島はとても治安がいいらしく、穏やかな時間の流れる場所だった。
基本的に買い物の時は個人の行動で、ナミに貰ったお金を持ってそれぞれの行きたい場所に向かう。
だけどその場所は、みんなだいたい決まっているらしい。
私は特に何が欲しいワケでもないから、いつも島の中をうろうろしながら美味しそうなものがあったら食べたり、たまに洋服屋に入ったり。
「むーちゃーん?」
声のするほうを見てみると、大きな魚を引きずっているサンジだった。
タバコを咥えながら右手を軽く振っているサンジに駆け寄っていくと、何してんだ?と問い掛けられる。
何もしてない事を伝えると小さく笑って、なんか美味いもん食いに行くかと誘ってくれた。
勿論一緒に行く。
暇だからね。
「重くない?」
「持ってみるか?」
「…………動かない」
「か弱いお嬢さんだ」
ピクリとも動かない魚にくくりつけられている紐をサンジに渡すと、はははと笑いながらまた歩きだした。
魚を買ったお店で聞いたのか、美味しいっていう食堂に入る。
沢山注文して、サンジは料理の研究をしているらしくちょっとずつ食べ始める。
「むーちゃん、どれが好き?」
「うーん…これ、とか?」
「うん、確かに美味い」
もう料理の研究はいいのか、今度はパクパクと大量の料理を平らげていく。
島によって全く違うご飯を食べるのも楽しい事で、きっとルフィも今頃沢山食べているに違いない。
ルフィのお小遣いのほとんどは食べ物に消えてるんじゃないかと思う。
「お腹いっぱい」
「そりゃあ良かった」
「でもサンジの作るご飯の方が美味しかったよ」
驚いたようにパチパチと瞬きをし、咥えていたタバコを右手で持つと、立ち止まっていた足が再び動き出した。
「嬉しい事言ってくれるねむーちゃんは。作る甲斐もあるってもんだ」
ははっと聞こえた笑い声。
嬉しそうなサンジになんだかほんの少し、私も幸せな気分になっていた。