真っ青でどこまでも広がるみたいな海の真ん中を、船でゆらゆら、ゆらゆら。
この船以外のものは何もない、そんな海を船の先頭でただ眺める。
争いも何もない、平和で私の大好きな時間。
「何してんだ」
「…ぼーっ、と」
「まんまだな」
何もない海の真ん中、ゾロも暇なのか歩いてきて私の隣にドカッと座った。
何をするわけでもなく並んでぼーっと眺めるだけ。
なにが楽しいのかも、正直なところわからないのだけれど。
「おっきい魚とかいないかな」
「狩るのか?」
「それはゾロに任せるよ」
「いやそれは自分でやれよ」
「無理だよ怖いもん」
んなこったろうと思った、と小さく笑いながら私の右腕をグッと押した。
思ったよりも近くにいたらしい。
私も同じように軽くやり返すと、横目でちらっと私を見てまた小さく笑った。
「なーに仲良く並んでのほほんやってンだてめェ、むーちゃんの横退きやがれマリモ」
「あ?知るか」
「むーちゃん、デザートのアップルパイを。…だからてめェ退け!!」
「っ何すンだてめェ!!!」
私にアップルパイを渡してくれると、サンジがゾロにげしげしと軽い蹴りを入れる。
小さな喧嘩の始まり。
こんなのも船の上では慣れっこの日常風景で、だから私はサンジにもらったアップルパイを頬張る。
ああやっぱり美味しいな。
「何やってんだ?また喧嘩か?」
「うん。美味しいね」
「サンジが作ったからな!」
やってきたルフィが特大サイズのアップルパイを頬張りながら私の隣に座る。
2人は割と本気になってきたみたいで、ゾロなんかは刀を取り出す始末。
だけど2人ともお互いを傷つけようとしてるわけじゃないっていうのは分かっているから、見ている私もルフィも何も言わない。
ナミならゲンコツで止めてるかもしれないけど…って思ってると、ナミがやってきて喧嘩は一瞬で止まる。(やっぱり凄いや)
何やってんだか、と溜め息を吐くとルフィとは反対側の私の隣に座った。
「もうすぐ次の島ね」
「そだね…どんな所なの?」
「とりあえず物資調達が目的だから、心配しなくても危険なところじゃないわ」
買い物いっぱいしなくちゃね、と笑いかけてくれる。
私が争いごとを嫌いなのを一番わかってくれているからこその返事だと思う。
「見えてきたわね」
いつの間にか現われていたロビンがそう言った。
やっぱり私は、こんな何でもない平和な毎日が大好きだと思った。