うちよそ | ナノ

えむこさんのダイエット夢主ちゃんをお借りしています。
ハチャメチャでメチャクチャなので心の広い方だけ。




やあ、と優雅に片手を上げながら近づいて来る男ーー天祥院英智に桃はむっとした顔を返す。

「なに」
「ずいぶん釣れないね。そういう気のないそぶりも良いのかな?」

ガーデンテラスのソファが皇帝様の特等席だということは、在校生たちの共通認識である。誰も進んで近寄ろうとなんてしない。
その玉座のど真ん中に堂々と居座った桃は、米粒を吸い込むハムスターさながらマカロンをすぽすぽと口に入れながらピリリと一触即発のオーラを醸し出した。

「昔はあんなに仲良しだったのに、今やすっかり反抗期なんだ」

にっこりと微笑まれてちや子はなんと返事すれば良いかわからなかった。ああ、とか、ええと、と誤魔化していると今度は桃が英智の足をけりっと軽く蹴飛ばしたので、ますます顔を青くするハメになってしまう。不退転の皇帝、天祥院英智様のおみ足を蹴飛ばすなど大変な無礼である。目の前でいとも簡単に行われたえげつない行為に思わず震えずにはいられない。

「こら。凛月くんに言いつけようか」
「……も〜、ナニ? ちや子のおやつの時間なの! 英智くんジャマしないで!」
「ちや子ちゃんは? 僕がいると邪魔かな」
「えっ? め、めっそうもないです……」
「ええっ……」
「だってさ」

ちや子を真ん中にはさんで英智が無理やりソファに押し入って来る。桃は必死に『ヤだって言って!』と小声で耳打ちしてくるが、それ以上に英智の圧力が怖い。

「うん……お茶を淹れるのが上手になったね」
「……! ありがとうございます」

優美な物腰で白磁のティーカップに薄い口づけをした英智の言葉に、ちや子は優秀なドッグトレーナーに褒められた子犬のような気持ちになってしまう。

「ブランデーをすこしだけ入れてて。マカロンに合うようにと思ったんです」

肝心のマカロンは全て桃の口の中に収まってしまっているのだが。

「……英智くんなにしに来たの」
「ああ、そうだった。この間桃がコマーシャルをやった製菓会社から差し入れが沢山届いたから、受け取りにおいで……って言おうと思ったんだ」
「え!」
「でも冷たくされちゃったから秘密裏に処分してしまおうかな……」
「えっ」

英智くん、楽しそう……。
桃はちや子の背中にべっとりくっついて隠れているので分からないだろうが、生き生きとした表情で英智は物悲しげな演技を続ける。

「桃が好きだと言っていたお菓子ばかり送ってくれたと聞いているんだけれど」
「…………ポ*テも?」
「*ルテ? ああ、そういう名前のお菓子も床一面覆い尽くすほどあったね。まあ今から処分を敬人に頼むところだから……」
「や……やだやだ! やだ! なんでもするから〜!! ポル*〜!!」
「桃ちゃん、そんなに好きなんだ。ポ*テ」

この軽率な桃の一言が自分を巻き込んだ事件になると、ちや子はまだ気づけていなかった。













「ま、まって、まってまって……!」

頭を制止させようにもどこを触れば良いものかわからず、ちや子はただひたすら桃のつむじに言葉を投げかけるしかできなかった。
桃はちや子のパンツに両手をかけ今にも引きずり下ろさんばかりだ。

「だいじょうぶだよ、凛月のママともしたことあるから!」
「なっ、なにが? どこが大丈夫なのっ、それも大事件だよっ!」
「えい」
「きゃああ」

一思いに奪い取られたパンツがぽーんと宙を舞うのを見てから、あまりの羞恥に顔を腕で覆いながらベッドに倒れこむ。
こんなことになった原因は、桃がガーデンテラスでポ*テと引き換えに提示した『なんでもする』という交換条件が発端だった。うず高く積み重なったポ*テの箱に陶酔している桃の肩を押さえ込み、英智は神の啓示のように二人に向かって『さる好事家のために女性同士の睦みあいを録画させてもらいたい』と宣告したのだ。なにそれいみわかんない!

「あ。ちや子、オトナだ」

抵抗してくれることを期待していたのに、『よくわかんないけどポ*テー!』と返事した桃はこうして今現在ちや子の足の間に顔を突っ込んでいる。

「ふわふわ」
「や、は、恥ずか、ひぇっ?!」
「こんにちはー」

思わず体を起こして足元を見下ろす。桃が呑気に挨拶しながらちゅっとワレメの上のあたりに爽やかなキスを送った。まさしく挨拶がわりのそれだ。
ちんまりした鼻先がふんふんと猫のようにそこを探り、男の子とキスするための唇がゆっくり開いて、熱い息を吹きかけてくる。それからたっぷりよだれを乗せた舌が、慰るようにワレメの全体を押し開くようにひと舐めした。

「っ……!」
「凛月のママが、んむ……女の子同士はこうやって遊ぶんだって」
「や、ぅ……そ、こで、しゃ、しゃべっちゃ、め……!」

はあい、と返事したあと唇がクリトリスを挟み込んだ。母乳を強請るような不思議な動きで、んちゅっ、んちゅっと食まれる。桃がこれをいやらしい行為だと思っていない様子が、ますます背徳感を募らせ、それが勝手に快感に変換されてしまう。

「あ、あっ……! だめ、桃ちゃ、だめぇっ……!!」
「えー?」
「はっ、う……やあっ、あ、ぃ……くっ……!」

びくっと腰を跳ね上げてちや子の体がかすかに戦慄く。
桃はぺろっと唇を舐めると、あっさりそこから顔を離した。それからベッドによじ登って来て、猫のように顔をくるくる手で洗う。大きなあくびを一つこぼして、ちや子の胸に顔を押し付けながら完全に眠る体制になってしまった。驚愕のマイペースさだ。

今にも雪崩れそうなポ*テの箱を眺めながら、ちや子はどうやってこの体勢からパンツを拾うかぼんやりと思案して桃が起きるまでの時間を潰すことにした。






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