たぶん、あなたは知っているのでしょう。
ぴっちりと蓋をして、溢れ出さないように気をつけているというのに。
それでも敏いあなたは知っているのでしょう。
どうせ受け取ってもらえないことなんて、分かりきっているんです。
お得意の困ったような笑みで、俺の気持ちなど受け止めもせず受け流すのでしょう?
そしてまるで何事もなかったかのように、俺に接しようとするのでしょう?
俺はなにより、無かったことにされるのが恐ろしいというのに。
残酷にもほどがあると思いませんか、あなたには一生分からないのでしょうけれど。
だから、告げられもせず、叶う余地も無い想いなど捨ててしまおうと思うのに。
なぜ、なぜ、なぜ。
どうしてこんなにもうまくいかないの。



君はきっと知らないね。
まあ、バレないように幾重にも蓋をしてしまっているからなのだけれど。
知るはずがないよね。
俺がどれだけ苦しいかだなんて。
この想いを告げれば簡単に叶うことは分かってる、だって君は俺のことが好きだから。
けれどそれをしないのが、たぶん俺の最後の良心なんだろう。
俺は、ほら、知っているだろう?
至極面倒な人間だから。
絶対に俺じゃないほうがいい。
もう少しやさしくて面倒のない男にでも、想いを寄せたほうがいい。
だから本当は、君にもっと冷徹に接するよう努めようとはしているんだ。
だけど、どうにもうまくいかないね。
本当は君の視線が他所へ向くのは腹立たしい。
他の男にでも、だなんて思いながら、なかなか俺を諦めない君に優越感を感じたりしてる。
君を捕まえてしまわないのが一番だと分かっているのに。
君を捕まえたら手放せなくなるのが分かっているのに。
どこまでも冷徹になりきれたら簡単なのにね。
どこまでも冷徹になりきれなくて苦しいんだ。

※※※
キッ陸



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