執務を終えるころには月影による薄明かりが部屋を満たしていた。
 筆を置き、軽く肩を回す。長い間室内にいたためか、かなり疲れが溜っていた。席を立ち、大きく伸びをする。
 窓辺に歩み寄り、空を仰げば見事な佳月だった。
 煌々と降り注ぐ光は、どこか吸い寄せられるようだ。ぼんやりと趙雲は望月を眺めた。
 どこからか、滑るように美しい音が聞こえてきた。二胡の音だ。
 誰が弾いているのかは分からなかったが、歌声にいた甘い音色が夜闇に溶けていくさまは、ひどく趙雲の胸を締め付けた。

 ぎいっと背後で扉が音を立てた。振り返ると馬超が立っていた。

「終わったのか?」

 歩みよってくる馬超に、趙雲は少し笑って答える。

「ああ」

 少し空いた趙雲の隣に、馬超は立った。
 窓から覗く月を見て、ほうっと息を吐く。

「美しいな」

 ふと、何かを思い出したように馬超はあ、と声を出した。

「ちょっと待っててくれ!」

 そのまま馬超は急いで部屋を出て行った。
 趙雲は馬超が出て行った扉を見つめていたのだが、思いの外直ぐに馬超は戻ってきた。手には何かを持っている。
 ずいっと差し出されたそれを受け取ってから、趙雲は呆れたように呟いた。

「ここは執務室だぞ…?」

「いいじゃないか」

 趙雲に手渡した杯に馬超は酒を注いでいく。
 今度は自分の分にも注ぐと、杯を持ち上げてふっと笑った。

「こんな夜だ。」

 丸く満ちた月の光は煌々と降り注いでいる。流れてくる二胡の調べが切なく胸に染みる。
 杯の酒に月の光が反射して光を湛えている。趙雲は嫣然と微笑むと、それを飲み干した。 







こんな情景が書きたかっただけです。
馬超が別人ですね…。



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