また夜が明け ればお別れだ。



 幸村は薄暗い部屋で明かりによって浮かび上がる慶次の背中を見つめていた。
 昨夜の出来事が嘘のように静まり返る部屋に、無性に寂しさが募る。
 意図的ではないにせよ、向けられた背中は広く、そびえ立つように大きく見えた。乱れ流れる髪は金獅子の鬣のよう。
 幸村はそっと慶次の背中へ寄り添った。
 温かい体温にほっと安堵する。規則正しく上下する背中は、さながら獣の背を思わせた。
 それならば、自分はさながら子獅子のようだな、と幸村は思った。

 もぞりと背中が動いた。まだ眠そうな慶次の低い声が聞こえた。

「…どうした、幸村?」

「いえ、何でもありませぬ」

 顔も向けぬまま放たれた言葉にこう返せば、そうかい、という声の後、また寝息が聞こえ始めた。

 明日になればあっさり別れるのだろう。
 でも、今だけは。幸村は縋るように瞼を閉じて、温もりの中へ沈んだ。








 慶幸は幸村が2歩後ろから去り行く慶次の背中を見つめているイメージ。
 自由気ままな慶次に、いろいろと募る思いを結局我慢して見送っちゃうっていう。
 

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