「お前が趙子龍か」
後ろ手に縛られ、無理矢理跪かされている目の前の男――趙雲は、俯いたまま何も答えない。 彼を押さえつけている兵が、趙雲の髪の毛をつかんで顔を上向かせる。 顔を上げた彼の瞳が、灯りを反射して、仄暗い部屋の中でギラリと光る。優しげな顔立ちに相反して、瞳は苛烈な色を宿し、今すぐにでも曹丕を射殺さんとするようだった。 「おい、答えろ!」 兵の声には眉一つ動かさない。ただじっと、王座にて頬杖をつく曹丕を睨み付けているのみだった。 「…いい。やめろ。」 兵は趙雲の髪の毛を離す。 ガタリと音をたてて席を立った曹丕は、彼の前に立った。 片手を上げ、兵達を下がらせる。兵達は渋ったが、曹丕が睨み付けてやれば、すぐに部屋の外へと出て行った。 広い部屋のなかに、趙雲と曹丕の二人だけが残った。 趙雲の前に身を屈める。ぐいっと乱暴に顎を持ち上げ、視線を合わせる。黒曜石のような瞳を見つめると、曹丕は肌が粟立つような興奮を感じた。 これが、父の求めた男か。自然と口角が吊り上がる。 「趙雲、魏へ下れ」 「断る」 即断された。 曹丕は少しおもしろく無さそうに眉を潜める。 「では、ここで死ぬか?」 懐から小刀を出すが、趙雲はそれにも表情ひとつ変えない。 白刃が光を受けてきらめく。すこし眩しそうに目を細めた後、静かに趙雲は瞼を閉じた。 曹丕はひたりとその白い首筋に刃を押し当ててみる。だが、直ぐに興ざめしたようにそれを放り投げた。 「ふん、まあいい。」 趙雲が瞼を持ち上げる。 「殺さないのか」 趙雲の問いに、曹丕は頷く。 「ああ…それでは詰まらぬ。お前は殺すには惜しい。」 曹丕は、ニヤリと、加虐的な笑みを浮かべた。 再び趙雲の顎を掴み顔を引き寄せる。 「俺のものになれ」 答えも聞かず、曹丕は唇を重ねた。 「っ!」 趙雲の顔が歪む。 刹那、曹丕は激痛を感じて口を離す。 唇を噛まれたのだ。口の中に鉄の味が広がった。 いよいよ刃物のように趙雲の瞳は光っていた。押さえ切れない殺気が部屋の中に充満している。彼は、静かに激高していた。 趙雲の唇が、紅でも引いたように赤く染まっている。それは酷く艶めかしくてらてらと光っている。曹丕は押さえ切れない欲望を、自分のうちに感じた。 「…面白い。仕付け甲斐がある。」 唇についた血を嘗め取りながら、曹丕は嗤った。 時間はたっぷりある。夜はまだこれからだ。 こんな状況ならこんな感じなのではという妄想です。趙雲が他サイトと比べてツン成分とか激しさ割増ですが、私はこのぐらいが好きです。 ギスギスした二人最高! |