「政宗殿、大分雲が晴れてきましたぞ」
「ほお、確かに、Milky Wayが良く見えるな」

 今宵は七月七日、七夕だ。

 互いを愛する余り引き裂かれてしまった織り姫と彦星が、天帝の赦しを得て、年にたった一度の逢瀬を楽しむ日。

「これだけ晴れていれば織り姫と彦星も逢えるでしょうな」
「そうだな。雁も今年は出番無しだ」

 二人並んで空を見上げる。濃い藍色の空を割って、白く霞んだ川が走っている。
 今頃あの空では、恋人達が久方ぶりの逢瀬を楽しんでいるのだろう。
 一年にたったの一回、一晩だけの逢瀬。愛し合う恋人達にとっては余りにも短く、少ない。

 共に居る喜びを感じられるのはこの夜だけ。後の三百六十四日は、離れ離れの寂しさの中過ごす。
 仕事を怠けたとはいえ、厳し過ぎる罰だ。天帝も、随分と性格が悪い。

 そんなことを考えつつ、幸村は隣に立つ政宗の顔をそっと見る。

 同盟を結んでいるとはいえ、何時敵となるか分からないような、そんな関係。
 例え今こうして話していても、明日また逢えるとは限らない。

 滅多に逢えない所は織り姫と彦星の二人と同じ。
 違うのは、年に一度必ず逢える二人と違って、自分達は一度離れたら何時逢えるのか分からない事。

 もし離れてしまっても、もう一度逢えるだろうか?

 時々、酷く不安に成ることは事実で。

 俯いていると、背後から優しく抱きしめられる。

「な、ま、政宗殿?!」
「どうせ俺達もばらばらになっちまったらどうしようなんて考えてたんだろ?」

 ぎゅっと腕に力が入り、息が苦しい。
 けれど、その力強さに安心して、体を預ける。

「If……」
「?」

「もし、俺とお前が天の川に引き裂かれてしまったりしたら……」

 天の川を跳び越えて、毎日お前に逢いに行ってやるよ。

 誰にも引き裂かせやしない。

 そう言うかのようにきつく抱きしめられて、顔が熱くなる。

「お、溺れても助けられるか分かりませんぞ」
「Ha!俺がんなヘマするかよ」

 軽口をたたき合って、でも抱きしめられた腕はそのままに、もう一度空を見上げる。
 自分達と同じように、甘い時間を過ごして居るだろう天上の恋人達に、静かに祈る。



 来年の今日だけじゃなく、明日も明後日もずっと永遠に




 愛しいこの人と一緒に居られますように。






 七夕の日にお願いしたら、なんと掲載許可…ですと…!
 私には書けないような可愛いダテサナ。
 本当にありがとうございました!


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