指先は





 所詮この手が触れられるものは、目に見えるものだけだ。
 分かっている。暴いた胸元をなぞりながら、反芻する。
 触れている指先のほんのりとした暖かさ。滑らかな肌。その奥に、巡る熱い血潮。確かに存在する証。触れたくても触れられぬそれは、鼓動によって主張する。
 例えばここに剣を突き立てて、一瞬でそれを奪うのは簡単だ。しかし、私はそうしたいとは思わない。
 続いて指先が到達するのは首。細くはない、男の首だ。この奥から私の名が紡がれる。
 少し開かれた柔らかな唇。すっと通った鼻梁。
 そう、そして。
「どうしてそんな目をしている」
 うつろに虚空を仰ぐその瞳。決して私に向けられることはない、その瞳。
 私が手にいれたいものは、その奥に在るはずだった。
 呟きじみた問いに返事はなく、私はふっと嗤う。
「やはり答えてはくれぬか」
 夜闇に紛れ、こうして肌を重ね合わせて、得られるものなど何一つない。掴めぬものに意味はない。愛惜、快楽、空虚、憐憫。
 それでも私は探り当てようとしている。在るはずのないものを。




 
 お前の心を。

(もしかしたら、などといらぬ期待を胸に抱き、今日も夜の狭間を探る。) 




 

 豆雪様、4444hit&キリリクありがとうございました!
 なんでもいいよ!ということで、丕→趙を書いてみました。
 いかがでしょうか…?
 短い!とか文体気に入らん!などありましたら返品OKです。  こんなものですが、お受け取りください!
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