てしっ… てしっ… 規則的なリズムで後ろから音がする。 いますぐ振り向きたい衝動もあったが、そのまま振り向いたらにやけてしまいそうだったのと、今手が離せないのとで、やめた。それからもう一つ、予感もあった。 「…おい」 予感は数刻と待たずに確信に変わる。 不機嫌な声で呼ばれて、俺はゆっくり振り返った。 「何だ?」 ああやっぱり。 拗ねた顔して後ろにすわっていたジタンは、少し悔しそうな顔をして目線を逸らしていた。気のせいか頬が赤い。 一寸間があって、飛んできた問い。 「いつまでかかるんだ。それ」 「うーん…どうだろ」 実際まだ終わりそうもなかったのもあるけど、ちょっとした悪戯心。あえてぼかずように言ってみる。 ジタンはそれを聞いてつまらなそうな顔をする。てし、てし、としっぽが規則的に動いてる。 俺はまた前を向いて作業を再開した。しばらく沈黙。 やがて耐えられなくなったのか、とん、と着地するような音がした。 「なに、ジタン」 「暇なんだ」 お。 後ろにどすんと衝撃。それから、肩に手が回った。 俺が振り返ると、顔を真っ赤にしたジタンは、叫んだ。 「…ちょっとは構えよ!」 |