「抱き付くな」
といえば、後ろから伸し掛かるようにして俺の首に腕を回す。超重い。 引きはがそうと腕を引っ張るけど、あいつ力だけは馬鹿みたいに強いから、全然外れない。肘鉄でも食らわせてやろうと思って体を捩ったら、すんでの所で躱された。 そのうち調子のったみたいで、服ん中に手を入れようとしてくるから、強くはたき落とす。 「触んな!」 でもあいつはやにやしながら、全然懲りずにおんなじことを繰り返す。 「嫌だって言ってるだろ、離れろよ!」 「嫌だね」 天の邪鬼なんだ。否と言えばやるし、是と言えばしない。俺をからかいたいだけなのさ。 そんなら俺だって。 さっきまでとは打って変わって、出来るだけ艶っぽい感じで。こう言ってやった。 「じゃあ、キスしてよ」 あいつは固まった。やった。成功だ。 心の中でほくそ笑む。 「嘘だよ。じゃ、俺は行く…ぜ…?」 そのまま立ち去ろうとした瞬間、強い力で左腕を引っ張られた。 思わず見開いた視界一杯に、余裕ない感じの、赤いあんたの顔が映る。 …あんた、天の邪鬼なんじゃなかったの。 甘寧はからかいたい気持ち半分甘えたい気持ち半分。 凌統からあんな台詞言われたのは初めてだったんでしょうね。 あと、キスって単語はこの時代ないでしょうが、この方が感じ良かったので…。 |