※現パロ…? ※どろどろ展開注意・キャラ迷子注意 「あいつ、ほんとに酷ぇんだ」 こればっかりだ、俺んとこにきた富松の台詞は。どうしようもないと分かってるから、悪態しかつかない。奴と富松は仲の良すぎる友人以上の関係であったことはないし、多分これからもない。 うなだれた頬に髪がさらりと落ちる。富松はそれをかき上げることもせず、黙っている俺に見向きもせず、勝手に喋りつづける。 「分かってんだ、頭では。あいつが普通で、俺が普通じゃないって。彼女つくって結婚して子供つくって、老後は二人っきりで死ぬまで一緒。そんな当たり前の人生だ。俺があいつの幸せ邪魔しちゃいけねえよな。笑って祝福して、結婚式ではちょっと泣きながら送り出して、喧嘩したら相談に乗る…そういう親友でいるべきだった。…なあ池田」 そこで初めて富松が顔を上げる。疲れきった顔をした男がそこにいた。いつもの威勢の良さ、生気に満ちた瞳はあのときからどっかに消えてしまって、ただ出会ったときから変わらない赤い髪だけが色褪せないまま顔の周りを縁取っていた。 「…何すか」 暫くぶりに渇いた喉が一言搾り出したのはただそれだけ。 伸びてきた指が俺の掌を捕らえた。ぎゅっと握られた掌からなんとも言い難い息苦しさがはい上がって来るようだった。視線が交錯する。 「…忘れたい。忘れたいんだ。もうこんな思いはたくさんだ」 きつく食い込んだ指先が俺の体を圧迫する痛みが、ほの暗い悦びに変わっていく。あの富松が俺を頼ってる!忘れさせてほしいなんて言って。ぐちゃぐちゃになった気持ちを塗り潰してやりたい。俺にそう頼むってことはさ、そういう意味だろ。 何年も前から一方通行だった。それが初めてベクトルの向きが変わろうとしてる。俺は、そろそろと腕を伸ばす。俯く富松の項の辺りに手をやって抱き寄せる。富松はしばらく動かなかった。やがて、ぐるりと俺の胴に腕が回る。 「俺でいいんですか」 「ああ、お前がいい」 俺でいい、の間違いじゃないか、なんて喉の辺りまでせり上がる言葉を飲み込む。ただ俺はそのまま、閉じ込めるように富松を抱きしめていた。 相手は次屋くんを想定していたり。 |